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〈評者〉芦名定道
キリスト教神学全般をその基本から学びたいと考えている人にとって、また神学に敷居の高さを感じている人はもちろん、神学を大学などで本格的に学んでいる人にとっても、一読に値する著書が邦訳されました。かなりの大著ですが(参考文献表や索引を加えて上下二段組千頁近い)、著者の問題意識の広さと学識に裏づけられた読み応えのある内容です。丁寧な記述とさまざまな工夫(各章の結びには、的確な「復習とディスカッションのための問い」と詳細な「さらに学ぶために」が付されるなど)は特筆すべきです。
著者ベッカーは、アメリカのヴァルパライソ大学の神学教授でアメリカ福音ルーテル教会所属の牧師です。著者は、本書の目的を「大学の学部生や神学大学院の院生が学術分野としてキリスト教神学を学ぶ準備となることがら」(まえがき)を紹介することと説明していますが、念頭におかれるのは、カトリック神学で伝統的な学科として知られる「基礎神学」(日本ではあまり耳にする機会がないでしょうか)であり、それには哲学的神学と神学総論が含まれます。つまり、本書は神学の諸学科全体の見取り図を描き、学術的な基礎を明らかにすることをめざしており、それは次の三部構成によって具体化されます。「第Ⅰ部 キリスト教神学」(キリスト教とその神学を構成する諸伝統を踏まえて、キリスト教神学とは何かを論じる)、「第Ⅱ部 キリスト教神学の対象」(哲学的神学と自然神学から始まり、啓示神学と信仰を論じ、聖書学・聖書神学を経て、救済史と特殊啓示に関わる諸テーマに至る)、「第Ⅲ部 大学の中でのキリスト教神学」(神学を構成する諸学科の解説とそれらの全体像を扱う神学総論。キリスト教神学と人文科学・自然科学との関係)です。
以下、本書の重要な特徴を紹介します。本書ではキリスト教における伝統の多様性が詳細に示されていますが、著者のルター派の立場にとどまらず、エキュメニカルな意識に基づいて広範な諸教派の信仰と神学がバランス良く取り上げられます(第Ⅱ部)。また本書では神学の諸伝統の意義が論じられると同時に、キリスト教と神学が直面する現代の状況が視野に入れられています(伝統と状況を意識した論述)。たとえば、第Ⅱ部の無神論への対論です。さらに現代の総合大学におけるキリスト教神学を論じた第Ⅲ部では、神学総論にとどまらず、キリスト教神学と人文科学(宗教学、哲学、芸術・建築・音楽)や自然科学(進化論、宇宙論、生態系の危機)との関わりが最新の議論を含め取り上げられており、これは、本書の優れた特徴の一つです。もちろん、総合大学における神学といっても、アメリカとドイツでは事情が異なります。著者はこの点についても興味深い説明を行っていますが(六四九頁以下)、「訳者あとがき」では、さらに日本の神学事情との比較を加えて解説されており、現代における神学教育の実情を知ることができます。
本書は、大学院で神学を専門として学ぶ前の学部生が念頭におかれていますが、神学に関心ある方すべてにとって良き学びのガイドになるでしょう。大著なので、大学や教会での読書会で、とくに関心のある章から学び始めるのがお勧めです。

















