現代に反響する預言者精神を読み解く
〈評者〉小友 聡
旧約聖書の「アモス書」という書名を聞いて、その全体像を即座にイメージできる人は少ないだろう。アモスは正典預言者の中で最初の人物であり、強烈な社会批判を語ったことで知られる。そのアモスの預言が記された預言書は十二小預言書の三番目にある。この預言書を深く理解するには、現代の聖書学の知見で新たに読み直さなければならない。本書は、旧約聖書学者である著者によって丁寧に解きほぐされた、最新の知見によるアモス書入門であり、簡潔な解説書である。著者はヨブ記の研究者として著名で、大作『ヨブ記注解』のほか、この「読もう」シリーズの『ヨブ記を読もう』の著者でもある。この『アモス書を読もう』も信徒向けの著作として極めて価値が高い。
アプローチが鮮明である。本書ではアモスが活動した紀元前八世紀の北イスラエル王国の社会状況が浮き彫りにされ、その中で語った預言の意味が説かれる。著者の見事な想像力でアモスのメッセージがあぶり出される。アモスは職業預言者ではない。「牧者で、いちじく桑の栽培者」(7・14)にすぎないが、社会の現実に対して強烈な批判意識を持ち、共同体と国家を相対化し、契約共同体の法を土台として正義と公正を語った。とりわけ、腐敗したベテル神殿において、命がけで宗教と社会倫理を説いている。
しかし、アモス書はアモス自身が記した預言書ではない。アモスの預言は複雑な形成過程を辿る。彼の預言が筆記され、世代を超えて伝えられる中で徐々に編集され、最終的にアモス書という文書となった。私たちが手にするアモス書は多層的な文書である。この多層性の襞に分け入り、あわいを明らかにし、本書はアモス書の新たな読み解きへと読者を誘う。
アモス書は三部構成(一~二章、三~六章、七~九章)だ。このうち、第三部「イスラエルの将来への幻」には、アモスが見た五つの幻が記され、アモスの活動に関する覚書(自伝記事)も配置されている。この第三部の著者解説は圧巻である。預言を辿っていく中で、アモスという突出した預言者の預言の意義、またアモス書が懸命に伝えようとするアモス預言の射程が鮮やかに浮かび上がる。
本書に記されるテクストの翻訳はすべて著者によるヘブライ語からの私訳である。ヘブライ語の「言葉」の意味の深さに、読者はしばしば圧倒される。アモスが立っている社会状況がまるで現代を映し出しているかに見えてくる。読者はそれに驚き、立ち止まって、この世界のあり様を考えざるを得なくなるだろう。たとえば、二章の「イスラエルへの審判預言」には、こんな説明がある。「ここで指摘されている事態は強者たちの『モラル』感覚の喪失です。法が立ち入ることのできない私的な領域でのモラルの崩壊を、神に対する赦しがたい背信行為であると指弾する。それが、預言者精神の真骨頂です」(五五頁)。アモスの預言者精神は今の時代に対して強烈な問題提起をしているのだ。それを理解するには読者の側にも想像力が求められる。共同体的に思考し、彼岸的救済を夢想せず、前向きに、主体的に生きたアモスに、評者は著者を重ねて読んだ。
本書は著者のお連れ合いである秀子さんが召される直前に執筆された。お二人の歩みが生んだ、最後の実りである。























