手紙が呼び起こす感動に学ぶ
〈評者〉塩野和夫

届かずとも綴り続けた宣教師
日米戦下フィリピンの収容所から
フランク・ケーリ著
北垣宗治、森永長壹郎訳
若松大祐編
アン・ケーリ監修
A5判・272頁・定価4400円・日本キリスト教団出版局
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アメリカン・ボードの宣教師フランク・ケーリ(一八八八─一九七三)はフィリピンで日本軍に捕えられ、四一年一二月から四五年二月まで抑留されている。捕虜生活によって一〇〇キロ近くあった体重は大きく減った。ところがその間、六十四通の手紙を書いている。多くは家族にあてたものだが、それらは深い感動を呼び起こしている。本稿は母に、妻に、子供にあてた手紙を分析し、その感動について考察する。
母エレンにあてた手紙は、四二年(三通)、四三年(四通)、四四年(二通)の九通である。これらで特色が認められるのは過去に関する描写である。「お母さんは手紙でもって愛と思いやりを表現できるすぐれた才能の持ち主です」(四三頁)。「あなたとお父さんが忠実に築いて下さった家庭の故に、あなたに感謝いたします」(五九頁)。「お母さんは私たち子供のために、何とたくさん読んで下さったことでしょう」(七二~七三頁)。「お父さんは善良で正直で、建設的で忠実で、まじめで学者的で、ユーモアのある堅実な人でした」(一二五頁)。このような記述からフランクを育てた母と父のぬくもりが今も彼を温めていることが分かる。
妻ロザモンドにあてた手紙は四二年(一通)、四三年(四通)、四四年(五通)の十通である。そこで詳しく書かれているのは捕虜生活についてである。「今われわれは四十一人だ。まことにちぐはぐの集団である」(三七頁)。「収容所にいる男たちの多くは老兵とか、学校教師とかで、フィリピン女性と結婚した、またはすべきだった男たちだ」(六七頁)。「有能な女医が、私に食べさせて再び元の強い人間にするため最善を尽くしてくれている」(八一頁)。
「仕事は、たとえば子供の病気のため親たちが自分の差し掛け小屋 で自炊できる許可を取ってくることである」(一一九頁)。「あなたが生んでくれた四人の子供たち、そしてヘレンの夫と、オーテスのアリスとに、お礼を述べてほしい。彼らはここ三年間、私の思いの中にあってどれほど力づけてくれたことだろう」(一五四頁)。厳しい状況にあっても子供たちに支えられたフランクの心には人間らしい活動が響いていた。
四人の子供たちにあてた手紙は四二年(四通)、四三年(四通)、四四年(四通)の十二通である。「お前の熱意と関心を必要としているこの世が、お前の故により善い、より明るい場所になるように」(長女ヘレンへ、六四頁)。「そのうちいつかお前も家庭を持ち、お前自身の子供を持つ喜びを味わって欲しい」(次女マーサ・ジーンへ、七一頁)。「私にとって大変大きな部分だったお前のことを忘れないし、お前に対する希望は尽きることがない」(長男オーテスへ、八五頁)。「お前には宿題を忠実にするという長所があり、それはその後入学した学校でも大いにお前の成功の基盤となった」(三女メアリ・アリスへ、五三頁)。子供たちを思い浮かべるフランクから四人それぞれの未来に対する希望が輝き出している。
ケーリの手紙が与える感動はどこから生み出されていたのか。それは家族と共に生きた彼の人間性からであり、過去・現在・未来という時を超えて光を放っている。私たちが生きる上でケーリの手紙から学ぶことは多く、重要である。












