『本のひろば』は、毎月、キリスト教新刊書の批評と紹介を掲載しております。本購入の参考としてください。2025年6月号
出会い・本・人
阿部謹也『自分のなかに歴史をよむ』(1988年、筑摩書房)(今井小の実)
特集 シリーズこの三冊!
「贖罪」を問う、この三冊!(最相葉月)
本・批評と紹介
- 『説教黙想アレテイア叢書 創世記1ー28章』日本キリスト教団出版局 編(朝岡勝)
- 『死生学年報 2025』東洋英和女学院大学死生学研究所 編(高橋原)
- 『「生きる」をいつくしむ』山口雅弘 著(富田正樹)
- 『改訂新版 筑豊に生きて』犬養光博 著(崔善愛)
- 『関西学院大学神学部ブックレット17 明日の地域と教会』関西学院大学神学部 編(伽賀由)
- 『宮城学院に連なる人々』佐々木哲夫 編(藤野雄大)
- 『説教の聴き方』朝岡勝 著(川﨑公平)
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編集室から
先日、「カーリングの町」と呼ばれる北海道の小さな町の特集番組を観た。町民たちの手作りのリンクから始まり、町出身の選手を中心とした日本代表チームが世界で活躍するまでの物語を追う番組だったが、中でも最初に町にカーリングを持ち込んだ人物の言葉が心に残った。「人生で大切なのは胸がキュンとなることだ」。
いいこと言うなあ、とつい感動してしまい、それから大学時代の恩師のことを思い出した。卒論の指導を受けていたとき、その恩師は、「論文のテーマの一番の決め手は、自分がときめくかどうかだ」と語っていた。学問的・社会的に重要か、自分の力量に合っているかなども大事な要素だが、何よりも心が動くかどうか。自分の中から意欲が湧いてくるようなテーマでなければ、長い論文を書き上げることはとてもできない。卒論に限らず、人生で何かを始めるときの指針となる教えだったように思う。
仕事柄、人文系の研究書の原稿を読む機会が多いが、読みながら著訳者のひとかたならぬ熱意に圧倒されることがある。調査の綿密さや論じられる主張、文章の書き方などから、この人にとってこのテーマが本当に大切なんだな、と思わされるのだ。書き手が強く心動かされて研究に没頭した跡がそこにあるのかもしれない。
誰かの胸がキュンとして、その対象を知りたい、伝えたいという衝動が生まれて書き始め、その文章にまた心を動かされた人が書籍の形にして売り出す。堅苦しいイメージの研究書も、誰かのときめきの結果なのだと思えば、やさしく身近な存在に見えてくる気がした。(豊田)
予 告
本のひろば 2025年7月号
(巻頭エッセイ)『トマス・アクィナスと「真作ではない著作」』松村良祐 (特集)「「信仰が折れそうになるときに読む」三冊~牧師も悩んでいます」上林順一郎 (書評 )B・M・メツガ ー、B・D・アーマン著『増補改訂版 新約聖書の本文研究』、説教黙想アレテイア叢書『創世記29-50章』、金子晴勇著『キリスト教思想史の例話集Ⅱ 命題集』他