神様の思いは戦争はNO!
〈評者〉関根一夫
『すべては神様が創られた』という絵本は不思議な魅力にあふれた本です。
「そう、すべては神様が創られたのだ。すべてに神様の思いが込められている」ということばにはじまり、丁寧に、しかし大胆に、「口は」、「手は」、「耳は」、「鼻は」なんのために創られたのかが語られ、さらに、「道は」、「空は」、「海は」なんのために創られたのかが書かれ、「そして、人は……」と続きます。
「人はなんのために創られたのか」という問いを絵本にするのは勇気のいることのように思いました。
でも、・そこに見えてくる神様の思い・という土台があるので決してこじつけにならず、愛と平和がどれほど大切なのか、平易な文章で、大人から子どもまで誰にでもわかりやすい文章で語られていきます。
神様の思いが、そのまま筆者の心と言葉を通して痛いほど伝わってくるように感じます。
奥田知志氏は日本バプテスト連盟東八幡キリスト教会牧師であり、認定NPO法人抱樸理事長であり、その他の重責を担って社会活動を続けておられる方です。
一九八八年に路上生活者に弁当を配ることから始めて住居の提供など三十年以上「ひとりにしない」という支援を続ける抱樸は、現在、生活困窮者だけでなく、地域に暮らす誰もが共生するための仕組みを展開する「希望のまちプロジェクト」という壮大な計画をも稼働中です。
人の痛み、哀しみに長い間真正面から向き合っているからこそ出てくる「戦争はNO!」、人間に対する神様の思いを集約して語られる「戦争はNO!」という姿勢が絵本の中に見事に表現されています。悲しみと痛みを感じながら・敢えて神の思いを見つめ直そう・という意識で書かれた文章には、すさまじい切迫感があります。
神様の人間に対する思い、国に対する思いはこういうことなのだと、明確に言いきる文章は読んでいて心が「そうだ」と納得すると同時に、読者をほっとさせる優しさを感じます。
さらにイラストレーターの黒田征太郎氏が描く絵の一枚一枚は、奥田牧師の文に対する舞台を提供しているようであり、そこに添えられた黒田氏の独特な手書きの文字と文章が生きて、まさにトンでる絵本になっています。
そこには黒田征太郎氏の中にある「生命への支援、人々への寄り添いの心」が愛情深く表現されています。
私はこの絵本を入手してすぐに私が関わっている保育園の礼拝で園児たちに読み聞かせました。数カ所言葉を言い換えましたが、全文を丁寧に園児たちに読み聞かせました。園児たちはじーっとして、驚くほど静かに聞いていました。
そして、礼拝が終わったとき、いつもはハイタッチなどして「バイバーイ!」と挨拶する園児たち、特に年長の園児たちがそっと私のところにやってきて代わる代わる私に抱きついて、ハグをしてそれぞれの教室に行きました。それは厳粛な瞬間でした。「神様の思いが何なのか」わかった瞬間でもあったのだろうと思いました。
大人にも、子どもにも、何度も読み聞かせて欲しい絵本です。
関根一夫
せきね・かずお=MACF牧師