『本のひろば』は、毎月、キリスト教新刊書の批評と紹介を掲載しております。
本購入の参考としてください。
2018年9月号
出会い・本・人
創造・救済のわざと人間(エッセイ:田島卓)
本・批評と紹介
- 『迷える社会と迷えるわたし』
香山リカ著、キリスト新聞社―(藤掛明) - 『悪と神の正義』
N.T.ライト著、教文館―(横田法路) - 『金の子牛像事件の解釈史』
大澤耕史著、教文館―(勝村弘也) - 『オリゲネス イザヤ書説教』
堀江知己訳、日本キリスト教団出版局―(小高毅) - 『被災後の日常から』
川上直哉著、ヨベル―(齋藤篤) - 『南島キリスト教史入門』
一色哲著、新教出版社―(後藤聡)
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編集室から
全国のキリスト教書店の投票で決まる、キリスト教本屋大賞は今年で8回目となりました。SNSでの投票による「いいね!」大賞も新設され、今年は、片柳弘史『こころの深呼吸 気づきと癒しの言葉366』(教文館)が、キリスト教本屋大賞といいね!大賞を受賞となりました。本書はインターネットで配信された著者のメッセージから、一日ひとことずつ、挿絵と共にまとめられた一冊です。「寝る前に読んでいます」「手元に置いてくり返し読んでいます」といった読者の方も多いようです。
先日知人が長期の入院となり、お見舞いに訪れました。差し入れとしてお花やお菓子も考えましたが、やはり本を選びました。闘病中の楽しみになることを祈って、作家による人生論、アートスポット案内、本屋の開店日記、宗教入門などの本を持参しました。健康なときにはまるでずっと生きられるかのように消費を繰り返して暮らしていますが、身近な人が病にかかると、世界が180度変わって見えてきます。死が身近にあり、悲しみや辛さを胸に抱えながら日々を生きる人が多くおられることを実感しています。
これまでキリスト教関連の本を読んだり、教会を訪れたりして、キリスト教は正しい答えを与えるのではなく、「なぜ、何のために生きるか」「なぜ死ぬか」という根源的な問いをまるごと受けとめて、共に歩んでくれるようなものであると捉えています。喜びも悲しみも、どんなことも飲み込んでくれるような。何かを制限して強制するものであるならば、二千年以上も人々の間に福音として存在できないのではないでしょうか。そんなとき、「そんなあなたではいけない」と叱咤し、理想に向かって鼓舞するリーダーではなく、弱さに同伴し、共に寄り添うイエスの姿が思い浮かびます。
病に倒れている人に、体の痛みはなくても元気をなくし落ち込んでいる人に、現実が何も変わらないとしても、その日、その夜を乗り越えられる心の支えになる本を少しでも届けられたらと思います。(福永)