聖書の学びの「第一歩」へ
〈評者〉前川 裕

聖書の基礎知識
新約・旧約外典篇
C・ヴェスターマン、F・アーヒウス著
J・ヴェーネルト協力
吉田 忍訳
A5判・224頁・定価4400円・日本キリスト教団出版局
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本書の原著はもともと旧約・新約聖書全体として一九八二年に刊行されたものである。邦訳は旧約部分のみが出版されていた(左近淑・大野惠正訳『聖書の基礎知識 旧約篇』、日本キリスト教団出版局、一九八四年/改訂新版二〇一三年)。評者は原著を所持しており、新約部分についても邦訳が出ることを待ち望んでいた。旧約部分の訳書出版から四〇年を経て、新約部分が出版されたことはたいへん喜ばしい。
本書の原著を刊行しているカルヴェル出版社は一九〇年以上の歴史を持つドイツの老舗神学系出版社であり、学術的かつ実用的な書籍を制作している。本書も標準的な学説を踏まえつつ、コンパクトに各文書が概説されている。しかし、それぞれの文書がバラバラに扱われるというわけではない。「聖書は、終始一貫して、ナザレのイエスに関する知らせをその中心とする、壮大にして多様かつ多岐にわたる歴史を告げる」(序、四頁)のであり、「個々の聖句は、この全体のつながりの中で、そしてその中心に対する関係の中でのみ、正しく聴きとることができる」(同)という基本的立場に立った解説がなされている。この点からは、『旧約篇』と併読することが強く望まれるだろう。
本書では、しばしば各文書の構造が図によって提示される。たとえば共観福音書の構造が三書並べて比較される(一九頁)。これによって、文字のみで説明するよりも福音書同士の対応関係がよく分かるようになっている。また各章の箱の大きさを変えたり(たとえば一テモテ書、一五八頁)、入れ子構造にしたりする(一テサロニケ書、一五二頁)ことで、どこが(著者の考える)重要な部分であるかが一目瞭然となっている。
さらに、重要なテーマにはコラムが設けられている。たとえば「マタイによる福音書における旧約引用」(二三頁)、「ヨハネによる福音書における7つの『わたしは……である』言葉」(七三頁)、「コリントにおけるパウロの敵対者」(一二七頁)などがあり、いくつかの章にわたる話題をまとめて読むことができるのは便利である。
原著では旧約・(旧約)外典(いわゆる「旧約聖書続編」を含む)・新約の順であるが、本訳書では新約を先にし、その後に(旧約)外典について紹介している。それぞれの文書の説明はごく短いものであるが、「歴史的・伝説的説話」「説話形式の教え」「説教形式の教え」「詩書」「黙示書」といったグルーピングがなされており、各文書の性格を把握するために有用であろう。新約外典については一頁のみの紹介で、ここはもう少し詳しく紹介してほしかった。また「訳者あとがき」では基本的な日本語文献が多数紹介されており、訳者に感謝したい。
基礎知識を提供する本書は、「聖書にむかって第一歩を踏み出させるもの」(序、五頁)であり、そこから聖書に親しみ、一人で学ぶことができるようになれば「この聖書の手引きは、そこで身をひくことになる」(同)と著者は記している。本書は聖書の学びが進んでからも、全体を俯瞰するために常に立ち戻るべき有益な書である。本書「旧約篇」「新約篇」と共に、「第一歩」を踏み出してはいかがだろうか。














