『本のひろば』は、毎月、キリスト教新刊書の批評と紹介を掲載しております。本購入の参考としてください。2024年11月号
出会い・本・人
不心得者の卒業生に与えられた二書(松本郁子)
特集 シリーズこの三冊!
性と生殖に関する健康と権利を知るためのこの三冊!(大嶋果織)
本・批評と紹介
- 『内村鑑三問答』鈴木範久 著 (柴崎聰)
- 『講解説教 出エジプト記』内坂晃 著 (犬養光博)
- 『スチューアト・バートン・ニコルズ伝』スチューアト・バートン・ニコルズ伝編纂委員会 編 (本井康博)
- 『傷によって共に生きる』北口沙弥香 著 (島しづ子)
- 『聖霊は愛を完成する』岩本遠億 著 (濱和弘)
- 『ユダヤ教の祈り』吉見崇一 編訳 (勝又悦子)
- 『古代イスラエル史』B・U・シッパー 著/山我哲雄 訳 (長谷川修一)
- 『「日本教」の弱点』西谷幸介 著 (深井智朗)
- 『災禍において改革された教会』カルヴァン・改革派神学研究所 編 (齋藤五十三)
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編集室から
今年のキリスト教書店大賞は最相葉月さんの『証し』(KADOKAWA)が受賞しました。副題にある「日本のキリスト者」一三五名の信仰の証しをつづったインタビュー集です。
クリスチャンではないという著者がキリスト者の信仰をどう受け止め、どう表現するのか。これまで多くのキリスト者にインタビューをして記事を書いてきたので、正直、ちょっと上から目線で読み始めたと思います。しかし、それは大変なおごりでした。
信仰者一人一人の真摯な歩みがユニークに綴られ、わたしはその多くに心を打たれました。著者の力量はもちろんですが、そこに神の計らい、キリスト教の普遍性が働いていることを感じます。こんなふうに書くのは職業病ではないかと思いつつ、やはりそうだと思ってしまうのです。
昨年度編集担当した書籍の製作過程で、キリスト教文学の定義をめぐって議論がありました。芥川らキリスト者ではない作家の作品をキリスト教文学としてよいのだろうかという意見があったのです。その意見に当該書籍は「まえがき」でこう応えています。「作者がキリスト教徒でない作家・詩人であったとしても、その文学的発想や営為の根拠に、キリスト教や聖書があり、そこからのメッセージと融和し、あるいは格闘しながらも、それに捕らえられ促されて表出する魂の文学」が本書におけるキリスト教文学の定義である、と。
付け加えれば、キリスト者ではないからこそ、キリスト者でない人たちに神の愛を伝える言葉をより豊かに持ちうるのではないかと、つらつら考える日々です。
(市川)
予 告
本のひろば 2024年12月号
(書評)大嶋重德著『若者と生きる教会・若者に届く説教』、小高夏期自由大学事務局編著『心折れる日を越え、明日を呼び寄せる』、ヘンリ―・ナウエン著『イエスさまについて行こう』他