『本のひろば』は、毎月、キリスト教新刊書の批評と紹介を掲載しております。本購入の参考としてください。
2022年7月号
出会い・本・人
本を介した著者との対話・人との交わり(高崎恵)
特集
ヘルマン・ヘッセの魂に触れるなら▼この三冊! (板倉素子)
本・批評と紹介
- 『新しいダビデと新しいモーセの待望』田中光 著 (鎌野直人)
- 『メンデルスゾーンの宗教音楽』星野宏美 著 (樋口隆一)
- 『脱原発の必然性とエネルギー転換の可能性』竹本修三、木村護郎クリストフ 著/日本クリスチャンアカデミー 編 (久保文彦)
- 『ヤバい神』トーマス・レーマー 著/白田浩一 訳 (左近豊)
- 『小川修パウロ書簡講義録 8』小川 修 著/小川修パウロ書簡講義録刊行会 編 (石川立)
- 『シンガクすること、生きること』ケリー・M・カピック 著/藤野雄大 訳 (小室尚子)
- 『P・T・フォーサイス 活けるキリスト』川上直哉 訳著 (大頭眞一)
- 『ガリラヤに生きたイエス』山口雅弘 著 (清水和恵)
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編集室から
七月の楽しみは、蛍を見ること。東北の実家を出て少し歩くと、一面に広がる水田地帯の、ある限られた区画だけ、日が落ちきってから数時間の間だけ、目が暗さに慣れるにしたがって、やわらかく明滅する黄緑色の光に会える。
あるいは空中で光の尾を引き、あるいは草陰で点滅して、誰かに自分の存在を知らせようとしている。それにしても仲間を見つけるための懸命な信号なのに、音もなく何と静かなのだろうか。
イエス様がキリスト者たちの存在を、生活の中の小さな光─灯─に譬えられたことを思い出す。マタイ、マルコ、ルカの福音書はよく似た言葉をそれぞれ違う文脈で残しているから、きっとイエス様ご自身がこの比喩を好んで、さまざまな折に語られたのだろうと想像する。
三つの福音書を読み比べていたら、面白いことに気づいた。マルコ福音書4章ではこの「灯」が、神の国の譬えに前後を囲まれて出てくる。どんな妨げにもかかわらず、種は三〇倍、六〇倍、一〇〇倍もの実を結び、植物は誰も知らぬ間に生い茂り、辺りを覆いつくす─灯は、世界中に及ぶこの「神の国」の勢いに巻き込まれて、そこにある。
灯に昼間の明るさはない。暗闇をほのかに照らし、光の届く範囲はごく限られ、人の手でかき消されることもある。
それでも、この「灯」は力強い。神の国のものだから、力強い。変わりゆく自然の中で数は少なくとも、約束を守るように毎年現われる、蛍にも似ているだろうか。(石澤)
予 告
本のひろば 2022年8月号
(書評)中山直子著『二羽の小鳥』、長谷川忠幸著『モーセの仰ぎ見るテムナーとは何か』、中島耕二編『タムソン書簡集』、斎藤宗次郎編著『内村鑑三先生の足跡』、窪寺俊之著『金子みすゞの苦悩とスピリチュアリティ』、富坂キリスト教センター編『北東アジア・市民社会・キリスト教からみた「平和」』他