【本のひろば】 2021年3月号

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2021年3月号

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編集室から

 小誌2021年1月号の巻頭エッセイ「出会い・本・人」で、作家のきどのりこ先生が絵本『こいぬのうんち』(平凡社)をご紹介された。きど先生は私が数年前にご依頼した講演会でも『こいぬのうんち』を推薦なさり、その際、ストーリーが掲載された資料を個人的にいただいた。

 冒頭に書かれた生まれたてのうんちの表現がリアルで印象深い。うんちは悩んだり傷ついたり自虐的になったりしながら神さまの愛に気づき、最後はたんぽぽの養分となって生涯を終える。うんちという言葉に抵抗を覚えながら読んだ。

 オープンして間もない頃の「うんこミュージアム」関係者が、盛況な中インタビューに応えていたことによると、子どもはうんちが大好きなのだそうだ。また、「うんこドリル」という小学生用の学習教材もベストセラーを記録し、学力向上に貢献しているらしい。もっとも、最初の出版はクレーム覚悟のかなり勇気が必要な挑戦だったとのこと。勇気も柔軟性もない私は、こんな話を聞くと自身のつまらなさに落胆してしまう。

 作者の権正生クォンジョンセンは韓国の童話作家。一月号でもご紹介していた通り、約五十年前に日曜学校教師をしながら物語を書き、韓国の第一回キリスト教児童文学賞で認められた。

 神さまの愛をうんちに語らせる。咎められそうだけれど、子どもたちが楽しそうに興奮するようすも目に浮かぶ。韓国で約半世紀に渡って受け継がれる作品は、言葉のインパクトに止まらず、生涯を教会活動に献げた作者の愛が養分となって育ったのかもしれない。(吉崎)

書き手
キリスト教文書センター

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