次世代への平和教育のために
〈評者〉岡田 仁
今年は「戦後八〇年」という節目の年にあたる。しかし、アフリカ・中東・アジア・欧州などにおいて紛争や戦争が続いており、難民・国内避難民の数は一億を超える。二十一世紀の現代において、戦争状態はなお継続しているといえる。
主イエス・キリストの十字架と復活の福音に基づく「和解の務め」や「平和構築」の使命を託されているキリスト者にとって、このような現実はまさに重大な課題であり、深刻な挑戦である。キリスト教会は、平和の福音を宣べ伝えるために何を、どこから始めるべきなのであろうか。
本書は、著者が属する日本キリスト改革派教会の聖書日課雑誌に連載した文章を加筆修正したものである。人文・社会の視座から平和と倫理の諸課題に迫る著者は、理論と実践を往復する新進気鋭の研究者であり、評者が常日頃より敬意を抱く一人である。このたびの刊行を心から喜びたい。
本書の構成と主要なテーマは次のとおりである。
第 一 章 「平和学」とは何か
第 二 章 キリスト教の戦争観
第 三 章 イスラエル・パレスチナ問題から考える平和
第 四 章 平和学から考える平和教育
第 五 章 河井道に学ぶキリスト教平和教育
第 六 章 沖縄から考える平和
第 七 章 戦争の記憶の継承と英連邦戦没捕虜追悼礼拝
第 八 章 核兵器廃絶とキリスト教
第 九 章 日韓関係から考える平和と歴史認識
第 十 章 日本のキリスト教会の戦争責任と罪責告白
第十一章 南アフリカから考える平和の諸課題
第十二章 平和的生存権と政治的課題としての平和構築
本書の特色は、平和を考えるうえで欠かすことのできない重大なテーマで構成されているだけでなく、内容的に高い水準を保ちつつも平易な言葉で論じられている点にある。
第一章で、平和学の意義と背景、目標が紹介される。「平和学」とは、「平和について学問的に探究する分野」であり、「平和について問い、考える際に、『平和学』からの知見に学ぶことはたいへん有益」(p8)であるという。とくに「平和学の父」ヨハン・ガルトゥングの思想を踏まえつつ、ヤマトと沖縄、東アジアの文脈において「平和」をいかにとらえるべきかが丁寧に考察されている。平和学が、広島・長崎への原爆投下を契機に生まれたことを評者は初めて知った。また、聖書に基づく人格教育(p45)や著者が名づけた「領域主権論的平和構築」(p99) など、大学でキリスト教教育に携わる者として、深く共鳴した。「時が良くても悪くても、平和教育の種を希望とともに蒔き続ける」という不断の姿勢の重要性に改めて気づかされた次第である。
全十二章なので、教会や学校での月毎の勉強会のテキストとしても本書は最適である。また、もっと深く考察したい読者のために、「さらなる学びのための参考文献」が章末ごとに紹介されている。和解と平和の実現を強く願う著者の意図と目的がここにも反映されていよう。
教会が平和の本質に深く向き合い、神の御心を探るために、本書は最良の手引きである。その意義は大きく、必読の一冊である。本書が広く読まれ、キリスト教平和学の次世代が育まれていくことを強く願ってやまない。














