祈りを初めて学ぶ人にも祈りの熟練者にも
〈評者〉近藤誠
月刊誌『信徒の友』に掲載された記事をまとめなおし、「信仰生活ガイド」として書籍化されたシリーズのうちの一冊である。これまで第1シリーズとして全5巻が発刊されており、本書は第2シリーズの第1巻、題名の通り「祈り」がテーマとなっている。以降、続刊が予定されている。
『信徒の友』(1995年から2023年まで)から、カトリックもプロテスタントも、教派的背景を問わず13名の著者が選ばれており、それぞれの深い見識によって、読者は「祈り」の魅力や豊かさを存分に味わうことができる。「レッスン」という語感から手に取りやすく、祈りについて初めて学びたいという者にはもちろん、普段から祈りを欠かさない者にも新たな視座が与えられるだろう。
目次を開くと、執筆の年代順ではなく、「祈りとは」、「祈りの遺産」、「教会での祈り」、そして「聖霊と祈り」という項目で括られている。また、著者ごとに完結した内容のため、どこから読んでも構わない。再編集されたものという意味では、以前読んだ内容を思い出しながら学び直すことができる上に、個人的には天上の友となった著者を偲ぶことにもなった。次に、いくつか内容を挙げてみよう。
「祈りとは」の中で深田未来生氏は、「祈りはキリスト者の呼吸である」としている。すなわち、祈りが絶えれば信仰は生命を失うということになる。そして、祈りには必ず相手があり、例えばヨブのぼやきさえ、祈りの一つの形となることを教えている。また、「祈り集」を「食べる」ように読みながら祈ることの秘訣や、私的な祈りと公的な祈りについての考察によって、祈りの原点を説き明かされた。
「教会での祈り」の最初の記事は、荒瀬牧彦氏による「礼拝でささげられる祈り」となっている。特に、『日本基督教団 式文(試用版)』「主日礼拝式B」に沿って、これに含まれる7つの祈りについて解説がなされている。また、自由祈祷と成文祈祷は対立するようなものではなく、両者は互いに高め合う関係にあると述べておられる。
「祈りの遺産」では、今橋朗氏によって、「主の祈り」の構造そのものに意味があることを示される。主が教えてくださったこの祈りによって世界の諸教会は一つとされていることから、「主の祈りを祈る人は孤独ではあり得ない」と励まされる。
「聖霊と祈り」で中村佐知氏は、「静かに主の前に座り、主に思いを向けることも祈り」と述べられている。巻末に、氏が2022年度に『信徒の友』で連載した「主に思いを向ける」の中から、示唆に富んだ祈り方が6つ掲載されている。「呼吸の祈り」や「塗り絵をしながら」といった興味深い祈り方の提案は、祈りを固定化やマンネリから解き放つ可能性を感じさせられる。
全ては紹介できないが、一つひとつに著者らの祈りに対する真摯な姿勢が表れている。読者それぞれにも独自の祈りの呼吸法があるだろうが、これらのレッスンを通してより健全で健康な祈りを身につけたい。また、全体として洗礼準備会のテキストに相応しいと考えられるし、成文祈祷や式文の解説、具体的な祈り方のポイントなどが例示されているため、教会での読書会や役員研修会などにもふさわしい。礼拝や祈祷会の備えに用いることもできよう。
近藤誠
こんどう・まこと=日本基督教団 仙台北教会牧師