『本のひろば』は、毎月、キリスト教新刊書の批評と紹介を掲載しております。本購入の参考としてください。
2024年1月号
出会い・本・人
キリスト教史は一国史を越えられるのか?(吉田亮)
特集
日本でキリスト教の黄金時代を本気で始めるために▼この三冊!(清涼院流水)
本・批評と紹介
- 『旧約聖書』B・W・アンダーソン著/高柳富夫訳 (月本昭男)
- 『旧約聖書神学』コンラート・シュミート著/小友 聡監訳/日髙貴士耶訳 (山我哲雄)
- 『わたしの神学六十年』近藤勝彦著 (小泉健)
- 『ひと時の黙想 心の貧しい人とは』ブレナン・マニング著/日本聖書協会訳 (英隆一朗)
- 『贈りもの』晴佐久昌英著 (土肥研一)
- 『夕暮れに、なお光あり。』渡辺正男、小島誠志、島しづ子、川﨑正明、上林順一郎共著 (三吉信彦)
- 『キリスト教思想史の諸時代 別巻1』金子晴勇著 (出村みや子)
- 『原始キリスト教の「贖罪信仰」の起源と変容』大貫 隆著 (田中健三)
- 『老い』H・ナウエン、W・ガフニー著/原みち子訳/木原活信解説 (橋谷英徳)
- 『教父哲学で読み解くキリスト教』土橋茂樹著 (阿部善彦)
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編集室から
『赤ちゃんをわが子として育てる方を求む』(小学館)は、わたしの愛読書です。1970年代、生まれてきても実親が育てられない赤ちゃんを妊娠できない夫婦にあっせんしていたとして問題になった「赤ちゃんあっせん事件」を起こした産婦人科医・菊田昇が主人公です。この行為は違法とされ、菊田は孤立無縁の状態に置かれることもありながら、命を守るため不屈の闘志を燃やし、後に特別養子縁組への道を開きます。
そんな菊田の生涯を幼少期から逝去までを描いた評伝小説です。わたしが特に印象に残っているのは、宮城県石巻での菊田の少年時代の過酷にして幸せでもあった日々です。人はどんなに逆境にあっても何か糧になるものが実は身近にあることに気づけば、力を得て人生を切り開いていけるのだということに気付かされます。
著者の石井光太さんは気鋭のノンフィクションライターで、貧困問題や家族問題など現代社会の暗部に丁寧な取材で斬り込んだ作品で知られます。『赤ちゃんをわが子として育てる方を求む』では、菊田とキリスト教との関わり、信仰に導かれる過程が菊田の心情的な部分も含めて丹念に書かれており、それなのにまったく護教的ではありません。この本は伝道目的に書かれたものではないと思いますが、菊田の生き方がおのずと神を証ししていることに、わたしは読むたびに感動するのです。
そして、伝えたい気持ちが先走りしがちなことを反省しつつ、キリストの教えの普遍性をもっと信じて、のびやかに文書伝道に携わりたいと思わされます。(市川)
予 告
本のひろば 2024年2月号
(巻頭エッセイ)小林よう子(書評)宮越俊光著『シンボルで味わう典礼・礼拝』、西谷幸介著『「日本教」の極点』、袴田康裕著『ウェストミンスター信仰告白講解 下巻』、大野高志著『かたわらに、今、たたずんで』、大柴譲治著『聴 議長室から』、浅野淳博著『新約聖書の時代』他