最先端の英語学習法を伝授!最良のキリスト教入門の書!
〈評者〉遠藤勝信
本書は、スーパーグローバル大学の1つである立命館大学で英語教育に携わる著者が、要点を絞って英語上達の秘訣を伝授する本である。「英語はこうすれば上達する」というハウツー本は書店の棚に数多く並ぶが、本書の特徴の1つは、「自分に合った方法を自分で見つけてもらうこと」を読者に期待する点にある。英語力向上には、英語学習への「意欲と勤勉さ」が欠かせない。「意欲」を生み出し、「勤勉さ」を持続させるsomethingを如何に持つかが英語上達の秘訣である。まず、「英語を身につけて何がしたいか」を明確にすること。将来の夢やキャリア設計が明確であればあるほど学習へのモチベーションも高くなる。また、楽しみながら継続的に英語に接する娯楽を用いることも1つの方法である。「自分に合ったものを」という本書の観点から、かなり詳しく、映画や音楽、スポーツ等の娯楽を英語学習に生かすヒントが紹介されている。生きた英語を学ぶには海外に出掛けるのが手っ取り早いが、日本にいても、自分の生活の中で、「英語の環境作り」をすることは決して不可能ではないと著者はその方法を紹介する。
英語を上達させるもう1つの秘訣は、「英語の苦手意識」を克服し、「英語に慣れる」ことである。日本人には完璧主義者が多く、間違いを恐れて、つい尻込んでしまう。しかし、間違いを恐れず、間違いから学びつつ、積極的に英語を喋り続けることで「英語脳」が形作られていく。本書の英語教育法は、著者が共著『Perspectives on English Language Education in Japan』で執筆した第1章に基づいており、その英語脳を作り上げ、日常英語会話力を獲得するために最低限知っておくべきことが紹介されている。
さて、ここまでが本書の主柱に関する解説だが、評者が注目するのは、本書を根底から支えている著者の明確な教育理念である。「……彼らの人生が変わってゆくその過程で、微力ながらそのお手伝いができるということは、大学教員としての価値ある使命・特権だと思っています」(259〜260頁)と著者は謂う。この教育理念は本書の随所に現れる。例えば、「英語日記」の項では「感謝日記」なるものが紹介され、「苦難の中にも感謝できることがないかを探すこと」、「絶望から希望を見つけ」出し、生きる力や再起できる力を得ること」(31〜34頁)の大切さが述べられる。「前向きな英語学習」の項では、人生において前向きになれないときに聖書の言葉が助けとなったという自身の体験が紹介され、「皆さん、一度しかない人生だから、ぜひ前向きに生きて」欲しいと読者に語り掛ける(66〜72頁)。しかし、夢が叶わぬときには、「諦める勇気をもつこと」も肝心と、悩める若者たちに寄り添うアドバイスとなっている(75頁)。
英語の例文はすべて聖書から取られており、各章には聖書とキリスト教を解説するコラムが置かれている。終章の「異文化理解」の項では、グローバル社会においてキリスト教を学ぶことが如何に重要であるのかが、著者自身の異文化体験や、政治・社会問題への考察を交えて論じられている。本書は、最先端の英語学習法を伝授する本でありつつ、読者が自然なかたちでキリスト教に触れていく、キリスト教最良の入門の書とも謂える。
遠藤勝信
えんどう・まさのぶ=東京女子大学現代教養学部教授