希望の光がここに!
〈評者〉小友 聡
評者が最も心ときめく本が出版されました。牧師・小島誠志先生と写真家・森本二太郎さんのコラボによる『光は闇のなかに』です。本は本ですが、黙想写真集と紹介したらよいでしょうか。一五年前に出版された『夜も昼のように』に続く第二弾です。前著は何度も版を重ね、多くの方々に愛読されました。その前著に続くこの『光は闇のなかに』の出版を評者は心待ちにしていました。
著者の小島誠志先生は元日本基督教団総会議長で、現在は四国・久万教会の牧師をされています。「聖句断想」という黙想集を数多く書いている先生です。知る人ぞ知るですが、小島先生は『信徒の友』に毎月のように短歌や俳句や詩を投稿され、それが紹介されています。心に染み入る信仰の言葉をやさしく紡ぐ先生です。森本二太郎さんも写真家として著名な方です。大自然をテーマに魂を揺さぶる写真を撮り続けています。森本さんも、やはり私たちにとっては『信徒の友』でおなじみです。この二人が見事なコラボレーションで本書を創り上げてくれました。
本書は六〇頁ほどの小さな本です。けれども、この本ほど今、キリスト者に深い慰めを届けてくれる本はないのではないか、と思われます。打ちひしがれて泣きたいとき、落ち込んで聖書を読む気力すら失われたとき、この本を開けば、深い慰めと心に届く希望の言葉に出会えます。涙が拭われ、明日を生きる勇気を与えられます。聖句を語る小島先生のメッセージと、みずみずしい感性で聖句を照らし出す森本さんの写真で、多くの人たちが癒される経験をするに違いありません。
少し紹介しましょう。「死の陰の谷を行くときも」と題した詩編二三編四節の聖句が引用されます。その聖句に小島先生はメッセージを添えています。「人生には目を開いて通過できない地点があります。死の陰の谷。すくんで歩けなくなります。歩けなくていいのです。羊飼いがその胸に抱いて一緒に通過してくださいます」と。左頁の写真では、ごつごつした岩の狭間から可憐な野の花が顔を出して、咲いています。まるで「私もここにいるよ」と囁いているような大自然の小さな命です。小島先生の「歩けなくていいのです」という言葉に、涙がこぼれ落ちそうになりました。羊飼いの胸に抱かれて死の陰の谷を渡って行けると思うだけで、ほのかな希望が見えてきます。明日に向かって生きる力が湧いてきます。このような聖句に毎日出会えるならば、どんな試練があっても、たじろがずに歩いて行けるのではないか。そんな気がしてきます。
評者はこの本を、病床にある教会員を訪ねる時にプレゼントとして用います。きっと多くの牧師たちがそう考えるのではないでしょうか。本書は、希望を見出せないでいる方々、試練に遭っている方に届けたい本です。たとえキリスト者ではなくても、どこかの頁を開くだけで、慰めの言葉に出会えます。『光は闇のなかに』というタイトルの通り、今、先が見えず闇の中を喘いでいる人たちに、光を届け、生きる勇気を与えてくれる癒しの本です。このような素敵な本を私たちに届けてくれた、小島先生と森本さんに心から感謝いたします。
小友聡
おとも・さとし= 日本旧約学会会長