『本のひろば』は、毎月、キリスト教新刊書の批評と紹介を掲載しております。
本購入の参考としてください。
2017年10月号
出会い・本・人
負うた子に教えられる(髙橋優子)
本・批評と紹介
- 『キリスト者の標識』
井上良雄著、新教出版社―(関田寛雄) - 『ポップカルチャーを哲学する』
髙橋優子著、新教出版社―(ラフェイ・ミシェル) - 『異端反駁Ⅱ』
エイレナイオス著、教文館―(土井健司) - 『ゴッホと〈聖なるもの〉』
正田倫顕著、新教出版社―(久米あつみ) - 『宗教改革史』
ローランド・ベイントン著、新教出版社―(踊共二) - 『カルヴァン神学入門』
G.プラスガー著、教文館―(佐藤司郎) - 『「ハイジ」の生まれた世界』
森田安一著、教文館―(小塩節) - 『聖書は何と語っているでしょう』
湊晶子著、ヨベル―(鈴木典比古)
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編集室から
人生に興味がある。だから、都筑響一の本はいつも楽しみ。最近、改めてぱらぱら読んだのは『演歌よ今夜も有難う―知られざるインディーズ演歌の世界』(平凡社)。先日図書館で目にして読み直したのだけど、やっぱり面白かった。
都筑が17人の「インディーズ」演歌歌手にインタビューし、その人生をまとめたもの。何年も車で全国を走り回り、車中泊をしながら歌い続けている人。年中無休で駅前で歌う人。清掃車の運転をしながら、美容院で働きながら歌う人。紅白歌合戦には出てこないそういう方々が、今日もスナックや健康ランド、そして路上で歌い続けているのだ。 なぜそういう人生を選び取ったのか。どうしてそうまでして歌わざるをえないのか。何が歌へと駆り立てるのか。何を考え、どう成長してきたのか。都筑の熟練の文章が、読者をぐいぐいと一人ひとりの人生に引き込んでいく。
この本を読みながら、信仰者の人生を思った。
『共助』という小さな雑誌を毎号読んでいる。その最新号にIさんの葬儀説教が掲載されていた。お姿を拝見したことはあったが、こういう人生だったとは存じあげなかった。
1935年生まれ。脳性麻痺があり、幼稚園を探しまわったがどこも受け入れてくれない。最後に行きついたのが教会付属の幼稚園だった。母はまもなくその教会で洗礼を受けた。Iさんも同じ恵みにあずかり、生涯、教会の信仰に生きた。軍属であった父は、敗戦間際、自ら命を絶った。
戦後、Iさんは平和運動に深く関わった。自らの「障がい」、そして父の罪と死を、神の計画の中に位置づけ、平和を求める働きを主の召しと受け止めたのだ。
こうした一人一人の人生に根ざした神学は、どういう形を取るのか。そういう試みはきっとあるはず。学びたい。 (土肥)