『本のひろば』は、毎月、キリスト教新刊書の批評と紹介を掲載しております。本購入の参考としてください。
2021年5月号
- 出会い・本・人 読人書ー人を読む書 松谷曄介
- 特集 「日本キリスト教史」を学ぶにはこの三冊! 村松晋
- 本・批評と紹介
- F・シュライアマハー著/安酸敏眞訳 『キリスト教信仰』 (川島堅二)
- 荒井洋一、出村和彦、金子晴勇、田子多津子訳 『アウグウスティヌス著作集第19/Ⅱ詩編注解(4)』 (加藤武)
- 日本キリスト教会著 『CATS 日本キリスト教会大信仰問答』 (伊藤悟)
- 松谷曄介編訳 『香港の民主化運動と信教の自由』 (山口陽一)
- H・キュンク著/福田誠二訳 『キリスト教』 (阿部仲麻呂)
- Solae(ソラ)作/いしいくみこ絵 『起き上がり小法師』 (角田芳子)
- 西岡義行責任編集 『平和をつくり出す神の宣教』 (藤本満)
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編集室から
東日本大震災から10年の節目を迎えた。当時、私は高校三年生、卒業式の前々日だった。山陰地方の全寮制の学校にいたため揺れを感じなかったが、皆でテレビ画面に釘付けになったのを覚えている。
先日、被災者支援に尽力したある牧師が、説教で当時のことを語っていた。その中の、石巻の被災者が語った言葉に胸を打たれた。「今回の津波ですべてを失いました。でも、今日はこのことばで生きているんです」。〝生きていればきっと笑える時が来る〟そう書かれた絵手紙を握り締め、牧師に語ったそうだ。
今は様々な言葉に囲まれている時代だ。街中に張り出された広告の文字、スマートフォンで見る数々の記事や、誰かの投稿、コメント……。購買意欲をそそる言葉、危機感を煽る言葉、人生のためになりそうな言葉。ひょっとしたら、現実の人間と話している時間よりも、こういった言葉に触れている時間の方が長いかもしれない。そんな生活をしていると、「この言葉で生きている」なんて、考えることはまずないだろう。しかし人は、「最後は言葉で生きる」。この牧師の体験は、そのことを教えてくれる。
わたしたちが世に送り出してきた言葉はどうだろうか。日常生活においても人を生かす言葉を語ってきただろうか。光は闇の中で輝いている。広がる闇を感じる中だからこそ、輝く言葉があることを信じて励みたい。まだまだ先になるかもしれないが、コロナが収まったときには、教会のご高齢の方々に、「あなたを生かす言葉はなんですか」と伺ってみよう。(桑島)
書き手
キリスト教文書センター
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