『本のひろば』は、毎月、キリスト教新刊書の批評と紹介を掲載しております。
本購入の参考としてください。
2019年2月号
- 出会い・本・人 内戦下スリランカでの出会い (志村真)
- エッセイ 『伊豆・川奈に導かれて』を上梓して (山本文夫)
- 本・批評と紹介
- 『わたしの信仰』
A.・メルケル著、新教出版社―(木村護郎クリストフ) - 『一分間の黙想 心からの祈り』
K.ムーア著、日本聖書協会―(武田なほみ) - 『ヨハネ福音書入門』
R.カイザー著、教文館―(伊東寿泰) - 『神についていかに語りうるか』
W.シュスラー編、日本キリスト教団出版局―(片柳榮一) - 『子どもとつむぐものがたり』
小嶋リベカ著、日本キリスト教団出版局―(加藤純) - 『宗教改革期の芸術世界』
上智大学キリスト教文化研究所編、リトン―(山田香里) - 『教会の政治 キリスト教会の礼拝』
吉岡繁著、一麦出版社―(吉平敏行) - 『ユダヤ人の歴史と思想』
黒川知文著、ヨベル―(金井新二) - 『良く生きる手がかり12』
廣瀬薫著、ヨベル―(村山順吉) - 『イエスに迫る』
渡辺英俊著、ラキネット出版―(小海基) - 『宗教改革500周年とわたしたち 5』
ルター研究所編、リトン―(白川道生)
- 『わたしの信仰』
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編集室から
昨秋公開の映画「教誨師」は大杉漣の遺作であり、季刊『Ministry』(2018年11月号、キリスト新聞社刊)に佐向大監督と川上直哉牧師の対談が掲載されていたほか、多くのメディアで取り上げられていました。教誨師として活動する牧師を描く作品ということもあり劇場に足を運びました。
舞台は刑務所の一室で、大杉漣演じる牧師・佐伯と死刑囚との対話のみが映し出されます。映画では事件背景や動機は触れられないまま、対話だけで進行してゆきます。死刑囚を演じる六人の俳優たちの鬼気迫る演技やまなざし。生きること、死ぬこととは何か、罪、救いとは、人間に人間が裁けるのかという問いを、観客に繰り返し投げかけているように感じました。それら全てが、鑑賞後にもずしりと重く、心に爪痕を残されたような感覚が抜けませんでした。
映画の終盤である死刑囚が大切に握りしめた紙に、「あなたがたのうち、いったいだれが、わたしに罪があると責めることができるだろうか」(ヨハネ八・四六)という聖句がありました。映画自体はフィクションでも、極刑として人の命を奪うことが行われている。その矛盾と現実の重さを考えずにはいられません。
劇中で「空いた穴を一緒に見つめる」という言葉が出てきます。佐伯が緊張感の中で言葉を選び、苦闘しながらも寄り添おうとする姿が印象的でした。現場で人と対峙したときにどういう言葉を語れるのかという投げかけのようにも思えます。
人が人を支える時にキリスト教の人間観や宗教として語れることの可能性と限界、そして人間が決めた枠組みを超えていく言葉の力をも感じる作品でした。(福永)