『本のひろば』は、毎月、キリスト教新刊書の批評と紹介を掲載しております。
本購入の参考としてください。
2017年11月号
出会い・本・人
愛読書は『悪魔の手紙』(上田好春)
エッセイ
第16回東北アジア・キリスト者文学会議に参加して(市川真紀)
本・批評と紹介
- 『シリーズわたしたちと宗教改革1 歴史』
藤本満著、日本キリスト教団出版局―(林牧人) - 『シリーズわたしたちと宗教改革2 聖書』
大住雄一著、日本キリスト教団出版局―(井ノ川勝) - 『待ちつつ急ぎつつ』
井上良雄著、新教出版社―(大野惠正) - 『正教会入門』
ティモシー・ウェア著、新教出版社―(久松英二) - 『「神」の発見』
小塩節著、教文館―(斎藤佑史) - 『日本の教会の活性化のために』
上田光正著、教文館―(加藤常昭) - 『旧約聖書の釈義』
D.スチュワート著、教文館―(小友聡) - 『ルターと賛美歌』
徳善義和著、日本キリスト教団出版局―(日笠山吉之) - 『宗教改革と現代の信仰』
倉松功著、日本キリスト教団出版局―(上田彰) - 『近代日本キリスト者との対話』
鵜沼裕子著、聖学院大学出版会―(深井智朗) - 『宗教改革の問い、宗教改革の答え』
ドナルド.K.マッキム著、一麦出版社―(真田泉)
- 近刊情報
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編集室から
『クリスマス』(ヤン・ピエンコフスキー絵/木原悦子文/日本キリスト教団出版局)について、得意気に語った一年前のことを今は後悔している。
背景や文字の飾りに一部彩色を施しているものの、主要な部分はすべて黒いシルエットで表現されている影絵のような絵本。水墨画に「墨は五彩を表す」という言葉があるが、この絵本にも用いたい。
2016年のクリスマス見本市会場で拝見させていただいたときは、本当によく知っていると思っていた。子どものときに何度も見た洋書を日本語訳で読む幸せ。受胎告知や、ヘロデ王が登場する場面に見覚えがなくても特に気にしなかった。しかしその後、幾度か目にする機会があるなかで、どうしても合点がいかず、ゆっくり記憶を振り返ってみてやっと、絵本を見るのは初めてであったことに気がついた。
最近は、自分の記憶に自信が持てないと感じることが多い。
『クリスマス』を最初に知ったのは、子どものときに愛読していた雑誌の紹介だった。ハガキ半分ほどのスペースに表紙と本文の小さな写真が二、三枚掲載されていた。すぐにこのヨーロッパの香り漂う絵本がほしくなった。でも手に入れられない。仕方がないので描き写して自分で作る。この無謀な取り組みを数年間クリスマスシーズンが来るたびに繰り替えしたことを思い出した。挑戦したところは羊飼いへの知らせの場面。子どもの妄想力は恐ろしい。制作中は天使の歌声が響いた。羊飼いたちの驚きの声が聞こえた。寒い夜に暖かな温もりを感じたような気がした。
今回改めて拝見し、この黒いシルエットによくあんなにも、五彩ならぬ五感を見つけ出したものだと思った。約三センチ四方の小さな絵で彩ったクリスマス。今考えると少し危険!
日本語訳版は、文字のレイアウトも原書の風合いを損なうことなくデザインされている。幼子をみつけた博士の喜びや赤ちゃんの産声も、また、聞こえてくるだろうか。(吉崎)