『本のひろば』は、毎月、キリスト教新刊書の批評と紹介を掲載しております。
本購入の参考としてください。
2015年7月号
出会い・本・人
聖書に問い続ける(矢田洋子)
本・批評と紹介
- 『旧約聖書神学用語辞典』
W.ブルッゲマン 著、日本キリスト教団出版局 ―(加藤 常昭) - 『私のヴィア・ドロローサ』
村岡 崇光 著、教文館 ―(大住 雄一) - 『市民K、教会を出る』
金鎮虎 著、新教出版社 ―(真鍋 祐子) - 『イエス・キリストの信仰』
リチャード・ヘイズ 著、新教出版社 ―(太田 修司) - 『神のみ前に立って』 大住 雄一 著、教文館 ―(左近 豊)
- 『中世キリスト教の社会教説』
E.トレルチ 著、教文館 ―(山本 芳久) - 『心をとめて 森を歩く』
小西 貴士 他・聖公会出版 ―(武藤 謙一) - 『兵士である前に人間であれ』
岩井 健作 著、ラキネット出版 ―(荒井 献) - 『道・真理・命(全3冊)』
斉藤 孝志 著、ヨベル ―(小林 重昭) - 『被ばく地フクシマに立って』
川上 直哉 著、ヨベル ―(吉田 隆) - 『医者と薬がなくてもうつと引きこもりから生還できる理由』
渡辺 聡 著 ―(中村佐知)
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編集室から
最近読んで面白かったのは、穂村弘監修『はじめての短歌』(成美堂出版)です。「いい短歌の正体とは。」という副題のとおり、短歌の「よさ」とは何かを、穂村弘さんが解説します。
彼が言うのは、言葉には「生きのびるための言葉」と「生きるための言葉」があるということです。前者は「社会的に承認された価値」を表現する言葉で、ビジネスやマスメディアなどで用いられます。その言葉を聞けばだれもが同じことをイメージできる。これに対し、後者は、唯一無二の言葉。
穂村さんは問います。私たちはなんのために生まれてきたのか。生きのびるためじゃなくて、生きるためなのではないか。もちろん生きのびなくては、生きることはできないけど、でも生きのびるだけでは、つまらない。そして「いい短歌の正体」とは「生きるための言葉」だ、と。それがどういう言葉であるか、穂村さんは豊富な例を用いて、とてもわかりやすく解説してくれます。例えば、こんな短歌が紹介されています。
「煤」「スイス」「スターバックス」「すりガラス」「すぐむきになるきみがすきです」やすたけまり
〈すぐむきになる〉を〈すてきなえがおの〉とすれば、わかりやすい。でも短歌としてはだめになる。なぜならこの〈すぐむきになる〉が、「生きるための言葉」だから。
この本を読みながら、説教のことを考えました。説教においても、教会に流布していて会衆に通じやすい言葉、つまり「生きのびるための言葉」と、説教者の生死に関わる唯一無二の「生きるための言葉」があるのではないか。それがどういう言葉なのか、私の内ではまだ具体的な像を結んでいないのですが、先達に学びつつ求めていきたいです。 (土肥)