《出会い》という恵みの証言
〈評者〉藤井清邦
尊敬する牧師であり、神学者である大野惠正先生から、新著『私が出会った人々──神の庭にて』をお送り頂いた。この本には、先生が出会われた三〇名を超す方々について記されている。そこには、私の存じ上げている方もおられれば、存じ上げない方もおられるが、そのお一人お一人に親しく出会ったかのような思いを覚えながら読み進めた。さて、親子ほど歳の離れた私が、大野惠正先生に出会ったのは、私が長崎古町教会に赴任した二〇一一年二月のことである。先生は、誰も知り合いのいない地に赴いた私と家族を、温厚な笑みをもって手を差し伸べ、温かく迎えてくださった。
大野惠正先生は、長野県町教会、伊東教会、浜松教会での牧会を経て、活水女子大学の教授を長年にわたってお務めになり、新共同訳聖書旧約部門翻訳委員、西南学院神学部非常勤講師などの要職を歴任された。多忙を極めておられた先生のご労苦は、察するに余りあるが、毎週日曜日には、長崎古町教会の礼拝に身を置き、常に神の御言葉と礼拝を源泉とされた。また、出会われた方々を大切にし、毎日、多くの方々を覚えて祈り続けておられた。先輩牧師の信仰の姿を見せて頂いた。
大野惠正先生と言えば、二〇一三年以降、新教出版社からシリーズで出版され、好評を得ている『旧約聖書入門』がある。旧約に示された神の恵みの豊かさと、その奥深さに触れることができる秀逸な旧約入門書である。先生の著書の魅力は、優れた講解のみならず、そこにイエス・キリストと神の愛が、はっきりと示されていることにある。
この度の新著は、人物を紹介した書物であるが、人物伝や伝記の類ではないと言えよう。そこに記されている方の生き様、生涯を通して、イエス・キリストと神の愛が浮かび上がってくる。また、信仰の目をもって見つめた時に見えてくる、主に生かされた命の輝きと、神が与えてくださる出会いの素晴らしさに気づかされる。
この度の著書の冒頭に、次のようにある。その言葉は、著者である大野惠正先生の信仰と、この本の趣旨をよく示すものであると思う。
「私という人間は、私ひとりによる自己形成の結果などではなく、人生の道々で出会った数々の人々との触れ合いの中で形づくられたものである。……そのような出会いを計らったのは私には神を除いては考えることができない。したがって、私にとってその人々との出会いは決定的に神学的意味を持つ」「まえがき」より引用
この本の最後に記されているのは、ご伴侶である大野佳子さんのことである。佳子さんもまた、信仰の人である。そして、お二人の出会いと、共に歩んでこられた日々が、神の恵みを証ししている。
この本を読み終えた時に、一つの思いがあった。それは、大野惠正先生に数々の出会いを備えたもう神は、私たちにも多くの出会いを与え、その一人一人の存在を通して、何と豊かな励ましと慰めを与えて下さっているかということである。
ぜひ、多くの方に、この書物を手に取って頂きたい。














