誰でも取り組める多様な事例が満載
〈評者〉吉澤慎也
教会から若者がいなくなったと言われて久しい。次世代を担う若者たちの育成と伝道は、日本の教会全体の喫緊の課題だ。今や誰もが、どうすれば若者が教会に集まるだろうかと真剣に悩み、教会の行く末を案じている。本書には、その打開策となり得るヒントが随所に散りばめられている。次世代育成・若者伝道のために祈り取り組んでいるすべての信徒・教職者に、本書を心から推薦する。
著者と私は、同じ学生宣教団体で長年ともに仕えてきた、いわば戦友である。正直に告白すると、私も同様のテーマで講演する機会がしばしばあるが、その際には「ぜひ、この本を読んで実践してください」と勧めるつもりでいる。私が何を話しても「それ、あの本に書いてありましたね」と言われてしまいそうなほどに、本書はこの分野における課題と可能性を幅広く網羅し、適切な言葉で言い得ている。そのインパクトを生み出しているのは、著者自身のありのままをさらけ出す姿勢だ。批判や恥を恐れずに惜しげなく手の内をさらすその潔さに、私は同労者としていつも感服させられてきた。
本書は、著者がキリスト者学生会主事であったときに出版した『若者と生きる教会──伝道・教会教育・信仰継承』(教文館、二〇一五年)と『若者に届く説教──礼拝・CS・ユースキャンプ』(教文館、二〇一九年)を合本にし、それに書き下ろし原稿「若者と生きる教会、それから……」を加えたものだ。合本部分を改めて読み返したが、色褪せるどころか、ますます「そうだったよな」と教えられることしきりだ。若者世代の変化は早い。一読したことのある方にとっても、新たな気付きや発見がきっとあることだろう。加筆部分については、近年のコロナ禍対応やオンラインでの取り組みなどにも言及されており、非常に興味深い内容になっている。今後、この分野におけるガイド本として、教会や神学校で広く用いられていくことを期待している。
文章はとても読みやすく、ユーモア満載。同時に、丁寧な聖書研究に裏付けされた堅実な神学的考察が、ひたむきに若者の魂に向き合い続けてきた著者自身の豊かな経験と相まって、「なるほどな」と深く肯かせられる。理論と実践のバランスが実に心地よい。その鋭い洞察は、必ずしも若者伝道のエキスパートになることを求めない。むしろ多様な事例を紹介し、いつでも誰でも取り組め、どの教会でも実践できる次の一歩を提示してくれる。本書を手にするあなたは、きっと身近な若者の顔を思い出し、その彼・彼女に対する自分のこれまでのあり方を吟味させられ、これからの関わり方に胸を膨らませながら、力強く背中を押してもらえることだろう。
根底に流れているのは、これまでこの分野を走り続けてきた諸先輩方や、まさに今、次世代に向き合っている働き手たちへの真摯なリスペクトだ。何よりも、若者たちへの愛で満ちている。その優しさは、私たちに挑戦する。変化を促し、覚悟を問う。若者と生きること。若者に届くこと。各教会・教団における実際の取り組みに、本気で生かしていきたい。教会の明日はそこにかかっていると言っても過言ではないのだから。
吉澤慎也
よしざわ・しんや=KGK総主事