礼拝の刷新によって共同体の生を刷新する
〈評者〉古谷正仁
ライフサイクルと信仰の成長
礼拝と教会教育を通して
ジョン・H・ウェスターホフ、 W・H・ウィリモン著
荒井 仁、越川弘英訳
A5判・208頁・定価3080円・日本キリスト教団出版局
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この本の帯にはこうあります。「もっと深く人生に関わる礼拝を」ショックでした。私達の礼拝の持つ弱点を、鋭く突かれた思いがしたからです。
そして序文には、それを更に鋭くえぐるように、こう書かれていました。「本書は、牧師、宗教主事、典礼や礼拝に関わる人々、そして信仰教育に携わる委員会、さらに信仰教育や教理問答を通して礼拝を刷新することに関心を寄せる人々、礼拝を通して個々人と共同体の生を刷新することに関心を寄せる人々を対象に記されている」。
この言葉は、礼拝を大切なものと考えながら、実は「教会とそれに連なる人々の生を刷新する」等という大切なことを、すっかり忘れてしまっていた私の日常、特に牧師としての日常に、冷水を浴びせたのです。そして読み進めて行くうちに、それは私だけではなく、本書を手にした「礼拝を大事にしていたつもりのキリスト者たち」にも及ぶであろうことを感じ、是非多くの人と共に読みたいと願うようになりました。
特に神学校の実践神学のゼミや、共に学び合おうと願う方々の読書会や勉強会などで、テキストとして取り上げていただきたい書物です。きっとその豊かな内容に、深い話し合いが生まれると信じています。
著者のウェスターホフもウィリモンも、実践神学の分野で多くの深い研究と実践を積み重ねてきた著名な神学者であることや、また翻訳を担当して下さった荒井仁、越川弘英の両氏も、我が国の実践神学の研究家、実践家として、信頼を得てこられた方々であることは、既に読者の皆さんが良くご存じのことでしょう。
ウェスターホフとウィリモンは、マンネリ化しがちな教会の礼拝の刷新に、大いなる野心を抱いて執筆したのではないかと想像しますし、荒井氏、越川氏もご多忙な中、このボリューム豊かな本書を、よく見つけ出し、こなれた日本語で訳してくださったものだと感謝しきりです。
目次を見ると十五にわたるチャプターの中には、「洗礼─キリスト者の入信儀礼」「聖餐─キリスト者の養育」といった定番ともいえる項目があり、それに続いて、「信仰共同体のアイデンティティの成長─教会暦」「キリスト者個人のアイデンティティの成長」「霊的な成長─個人で、そして共同でささげられる日ごとの祈り」「牧会的諸式─個人と共同体の生における移行期」といった興味をそそられる主題もあります。「離婚の認証」という度肝を抜かれるものまで提示され、そのための礼拝プログラムまで示されているのです。
本書を記した二人の神学者はこのチャプターにおいて、次のような意味のことを語っています。
①離婚率が過去十年でうなぎ上りに増加し、新たな結婚の数と同数の離婚が起こる地域もあると聞く。このような社会の中で、教会はこの深い痛みを経験する人々に配慮するために何を行っているか、自ら問い掛けなければならない。
②離婚を決意した二人に対する神の言葉とは何か。その結婚を守ることが出来なかった私達に対する、神の言葉とは何か。それらの問いから、離婚に対する礼拝的な応答を構築する試みが生まれてくるであろう。
二人の著者は、その問いを深く自らに問い掛け、一つの礼拝試案を提示するに至ったのでしょう。
結婚だけでなく、離婚という出来事もそれを行おうとする二人だけの問題ではありません。教会が責任的に関わろうとしなければ、共同体としての責任放棄です。私達は今、それを特に知るべきことだと感じました。それなしに、「礼拝を通して個々人と共同体の生を刷新することに関心を寄せる」ことなど絵空事です。「個人の問題だから」と傍観する訳にはいかないのです。すぐには取り組めなくても、課題として認識する必要はあるでしょう。それを知るためにも本書を強く推薦したいと思いました。
古谷正仁
ふるや・まさよし=日本キリスト教団蒔田教会牧師、日本聖書神学校教授