「教会は初めてのあなた」と教会をつなぐ本
〈評者〉田中伊策
この本は、クリスチャンではない方が、「私も教会に行っていいんだ」ということを伝える本です。
「教会ってこんなところ」「教会にいるのはこんな人」「キリスト教の教えあれこれ」「あなたは招かれています」という4章立てになっています。しかし、それを系統立てて説明しているのではなく、
32人の牧師が「さまざまな人を受取人として思い描きながら書いた手紙」(5ページ)として記されています。では、教会員や牧師向けではないか、というとそうでもありません。ここには信徒にも牧師にも訴え、あるいは問いかけている事柄もあるからです。
手紙の差出人である32人の牧師が相手の課題や悩みに寄り添い、自分の弱さ、小ささをさらしながらつながろうとしている姿は、きっとそれぞれの教会での牧師の姿でもあるでしょう。そこには牧師の働きの一端があります。執筆された多くの牧師が「教会で待っていますよ」と教会につなごうとされています。
一方で、「私たちは教会に人を招こうとするけれど、実際に来られたときに、教会は受け止める準備ができているか」と問いかけてもいます。ある手紙にこんな言葉がありました。「あなたが教会を訪ねて来られたのは、神さまがあなたを招いてくださっているということと同時に、なかなか動こうとしない教会に、神さまはあなたのような人を遣わしてくださったのかなと思います」(34ページ)。
さまざまな課題や悩みを抱える方を受け止めるためには想像力と学びや具体的な備えが必要です。その点で言うと、この32通のバラエティーに富んだ手紙は想像力をかき立てます。進学のために故郷を離れる若者、施設に入られた高齢者、恋人が神さまを信じて戸惑っている方、子育て真っ最中の方、ひきこもりの方、ハンディキャップのある方、自分の性のありかたについて悩んでいる方、ミッションスクールに通っている方、家族を天に送った方……。教会にとってそのような方を受け止める準備をすることと「教会にいらっしゃいませんか」と招くことは両輪だと思わされます。この本は、教会にも向けられているのです。
以前、私たちの教会の取り組み(生理用品の無料配布・中高生の居場所作り・同性婚の結婚式・生まれてくることのできなかった命の葬儀)に興味を持ったコミュニティラジオに出演しました。そのときパーソナリティから「教会ってクリスチャンが行くところですよね?」と聞かれたので、「いいえ、誰でも来ていいんですよ」と答えたら「へー!」と心底驚いておられました。教会というところは自分とは関係のない場所、というイメージのあるこの国で、本書は「教会はあなたに関係ない場所ではないよ。あなたの課題や悩みを受け止めるよ」と伝えているのです。
そんな教会の敷居は低くしておきたいものです。クリスチャンの友達によって教会と出会い、後に牧師になった方がこう書いています。「Kくんがこんなふうに教会の扉を開いてくれたから、私もイエスさまに出会うことができたんです」(46ページ)。閉まっている教会には入れません。その扉は教会の内側からしか開けられません。この本を通して、〝教会は初めての方〟が教会を訪れ、教会もその方をしっかり受け止める。そんなことを期待します。













