静けさの中に主と共に歩む生活を願うあなたに
〈評者〉大田裕作
ひと時の黙想 主と歩む365日
日々の聖句とひと言メッセージ
マックス・ルケード著
日本聖書協会訳
A6判変型・404頁・本体1800円+ 税・日本聖書協会
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手に取るなり、その装丁のやさしさに惹かれました。カバーの材質、色遣いが何とも温かみがあり、そのデザインから読者が長年に亘って本書を愛読することを願う制作者の心遣いが伝わってきます。ページを繰ると聖句と季節感のあるイラストが心に沁みてきます。また洗練された訳語のやさしさが秀逸です。なるほどここまで細やかな制作にこだわる内容がこの書には詰まっています。
著者のマックス・ルケード牧師は、深い霊性でしかもわかりやすい福音の提示によって知られる器です。ルケード牧師の筆致からは、天の栄光を捨て置いて地に降ってこられた主イエス様のへりくだりとその恵みが透明に伝わってきます。その物静かな言葉選びは読む私たちの自然で自発的な応答を引き出します。「このみことばのように生きたい」「このように人に接していきたい」。
現代の私たちは洪水のような情報社会の中で生活しています。多すぎる情報の中で私たちは過度に刺激を受けて、豊かに見える社会で差別化され疎外されて、却って貧しく生かされています。情報が価値を生むビジネスになっていますが、それによって踊らされ、神経をすり減らし私たちの内面をやせ細らす世界と時代の中に否応なく追い立てられています。その時代に私たちはどのように主との交わりをみずみずしく保ち、主の香りを放てるでしょうか。
聖書の通読の大切さは言うまでもありません。通読は聖書全巻を通して創造主であられる方の永遠のご計画とその恵みを味わい養われることです。日々の生活の中で時間を定めてその習慣を守りたいものです。かつてロイドジョンズ博士は、著書『説教と説教者』の中で語っています。「…聖書を体系的に読みなさい…。行き当たりばったりに読むのは危険です。それは自分の好きな箇所を読むことになり、聖書全体を読まないことになるからです。…説教者は…毎年一回聖書全体を完全に通読すべきです」。しかしすべての人が説教者のように十分な時間を聖別できないのも、現代人の現実です。彼はこう続けます。「…聖書を読んでいるとき…ある節が迫ってあなたの心を打ち、あなたを捉えるなら、そこから読み進まないようにすることです。読むのをやめてすぐにそれに耳を傾けてください。そのみことばはあなたに話しかけているのですから、耳を傾けてそれに応答してください」。
評者がこの書を手に取って即座に思い浮かべたのが上述の箇所です。本書の特長はまず短い1、2節の聖句が掲げられているところです。その短さが特長です。ちょうど長い通読の途中に立ち止まり黙想を始めるように、本書により読者は一つの聖句の前に静まります。精選された短い聖句ゆえに心に残り、届き、刻まれるのです。そして下段には、ルケード牧師のみことばに呼応する祈りの言葉や先達としての悟り、助言、自戒などが続きます。その語りかけは読者の傍らを共に歩む同伴者としての響きです。その同じ目線での語りかけが優しいのです。間に挟まれたイラストが絶妙の落ち着きを醸し出してくれます。森の中で音もなく移り変わる季節にハッとするような控えめな風物のイラストが、月ごとに読み進むうれしさを加えてくれます。
本書があなたの手に届き、その生活に静けさと潤いをもたらすことを信じてお勧めします。
大田裕作
おおた・ゆうさく=アンテオケ宣教会総主事