闇夜に輝き、主イエスの愛を奏でる、ふたごの星のように
〈評者〉佐藤知津子
ヒャッホウ!おばあさんだって冒険したい!
〜闇夜にまたたく星 それは道しるべ〜
DuoStella フルート・紫園 香、ピアノ・菅野万利子共著
四六判・80頁カラー口絵一丁・1100円・ヨベル
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まず、この本のタイトルの『ヒャッホウ!』と呼びかけられて、びっくりしませんでしたか。『おばあさんだって冒険したい!』─〝ふたり合わせて130歳のおばあさんたちの、いったいどんな冒険なんだろう〟と軽い気持ちで読み始めて、すぐに心の姿勢を正しました。そして夢中で読み通しました。それは、フルート奏者の紫園香さんとピアニストの菅野万利子さんの歩んでこられた壮絶な試練の歴史から始まっていたからです。
おふたりが世界に活躍する音楽家となったのは、もちろんその類まれなる才能によるものです。けれどもどんな宝玉の原石も、磨かれなければ輝きを放ちません。試練の砥石によって、ぎりぎりと身を削って研がれなければならないのです。乗り越えても乗り越えても押し寄せる苦難。厳しい競争社会での孤独と挫折。自分や両親の病気と離別。才能や努力・人間の力の限界を知ったおふたりを救ったのは、十字架にかかって苦しみ抜いて命を捧げてくださったイエスさまの、圧倒的な愛でした。
闇の中で見出した光に救われ、導かれたおふたりは、“Duo Stella”(ふたつの星)という「天の輝きを放つアンサンブル」を結成し、本書のサブタイトル『闇夜にまたたく星』として、闇の中で苦しむ人々をイエスさまの愛に導く『道しるべ』となったのです。
香さんはよく、〝大丈夫!〟という言葉を使います。「神さまはどんなお祈りも、必ずお聞きくださる。時が与えられるまで時間がかかっても、必ず最善をなしてくださる。だから絶対大丈夫!」だと……。その信仰すらも、神さまから与えられたもの。何度も試練にあって「ドン底を経験」したときに、イエスさまが香さんの「信仰がなくならないように私が祈るから大丈夫だ」と言ってくださったからです。そして香さんに「ドン底を経験させるのは、これから多くの兄弟姉妹の悲しみ苦しみを自分のこととし、力づけ、一歩進むためだ」と。万利子さんも、「心身共に限界」、極限に追い詰められたコンサートで、神さまが「祈れば、大丈夫ここにいるよ」と教えてくださった、と語っています。
おふたりに才能があって特別だったから、神さまが愛してくださったわけではない。神さま以外にすがるものはない、と何もかも手放して頼ったからこそ、助けてくださった。〝だからあなたも大丈夫、助けていただけるよ〟と、香さんと万利子さんは、この本を読む私たちに呼びかけているのです。
今、世界は混沌とした闇の中にあります。けれど、このおふたりの紡ぎ出す天上の調べは、その闇の中に光を届けてくれるのです。日本のいたるところへ、そして広く世界へと……。
「羅針盤は聖霊。燃料は信仰。嵐にあっても大丈夫。私たちの船にはイエスさまが乗ってくださっているから!」
さあ、Stella号を操って航海に出発する、この頼もしいおばあさんたちの冒険の旅を、私たちも楽しみに応援していきませんか。
「光は闇の中に輝いている。そして、闇はこれに打ち勝たなかった。(ヨハネによる福音書1章5節)」
佐藤知津子
さとう・ちづこ=日本同盟基督教団藤代聖書教会教会員・翻訳業