
図書館が好きだ。本を選ぶ自由、読む楽しみ、静謐な時を提供してくれる聖なる空間。そこで出会った様々な本たちによって養われて、今の自分がつくられてきたように思う。
なかでもカナダの作家モンゴメリの『赤毛のアン』シリーズは、十歳頃の私を感化し、世界観を明るく広げてくれた。主人公の快活さや空想力、聖書の言葉や美しい詩に魅了された。さらに物語にあふれる教会共同体に連なる人々の良心に触れ、それまで縁のなかったキリスト教に自然と憧れるようになった。今読み返しても、この良書のもつ伝道する力を感じる。
二十歳頃、大学の図書館で仏作家マルグリット・デュラスの初期の著作『静かな生活』に出会い、彼女の作品に惹かれた。卒論はデュラスで書いた。のちに『愛人』で世界的にブレイクする前のことである。デュラスは、世の不条理や日常生活に潜む人間の狂気を、空白の多い独特の文体で綴る。その作風はモンゴメリと対照的だが、矛盾や苦悩に満ちた人生を彼女なりの真摯さで描き出す。拙い卒論作成以来、デュラス研究はずっとライフワークにしようと定めている。
大学卒業の少し前に教会で洗礼を受け、憧れていたキリスト者となった。そのずっと後に神学大学に学んで牧師になり、あわせて旧約聖書を専攻し研究する者となった。以前にまして図書館のお世話になっている。出会いは遅かったが、歴史と文学と神学の融合たる旧約聖書の奥深さ・面白さは無比だ。複雑で謎多く、両義的で多様でありながら、神と共なる人々を描いている。たしか旧約を自分の専攻と決めたころだったか、あのデュラスが旧約聖書を愛読していたことを知って、私はとても嬉しかった。
歳月をかけて出会った好きな本、惹かれた作家が、わが内に一本につながっていく。この感じは心地好い。今は、旧約文書を書いたのはどの時代のどんな人?と思い巡らしながら、天の空を仰ぎみる。
(みやざき・かおる=東京神学大学 常勤講師)













