信仰のバトンを次世代につなぐ─ナウエンによる信仰入門
〈評者〉片柳弘史

ナウエンセレクション
新しい生き方
イエスについての七つの手紙
ヘンリ・ナウエン著
渡辺順子訳
英 隆一朗解説
四六判・160頁・定価2200円・日本キリスト教団出版局
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本書は、20世紀を代表する霊的指導者として知られるヘンリ・ナウエンが、オランダに住む甥のマークに宛てて、自分にとってイエスとは誰なのか、イエスと共に生きるとはどういうことなのかを綴った7通の手紙によって構成されている。
自らの信仰の苦悩を赤裸々に語ることで知られるナウエンが、信仰から離れてしまった甥にイエスの素晴らしさを伝えたいという思いに駆られ、迷いなくはっきりと、力強い口調でイエスへの信仰を告白している点で注目に値する。自分にとってイエスが誰であるかを、エウカリスチアの秘跡(感謝の祭儀。聖体拝領を頂点とするミサのこと)との関係で語っている点で、カトリック司祭としてのナウエンの真骨頂が発揮されているとも言える。
エマオに向かう弟子たちに現れた復活のイエスのように、人間の苦しみに耳を傾け、人間の心に信仰の火を灯す、苦しみからの解放者としてのイエスを語った後、ナウエンは、私たちと共に苦しんでくださる神であるイエスについて語り始める。「神は私たちから苦しみを取り除くことによってではなく、私たちと苦しみを分ち合うことによって、私たちを解放しようとされた」というのだ。この言葉を読んで私は、「私たちの人生、孤独、苦しみ、そして死さえ分かち合うことによって、イエスは私たちを救おうとされたのです」と語り、貧しい人々と共に苦しむことによってイエスに倣ったマザー・テレサを思い出した。ナウエンも、マザー・テレサも共に、「我が神、我が神、なぜ私をお見捨てになったのですか」というイエスの叫びに、神の愛の頂点を見出している点も興味深い。イエスは、人間が味わう最もひどい苦しみである神から見捨てられる苦しみさえ、人間と共に味わってくださった。ナウエンも、マザー・テレサも、そこに神の愛の頂点を見ているのだ。
ナウエンはイエスを、私たち一人ひとりの心の中に隠れた神であるとも言う。イエスは「私たち自身の心という隠れた場所で、私たちと語り合いたいと望んでおられる」というのだ。自分の心の中にイエスがいるのにまだ気づいていないなら、私たちはまだ自分を知らない。自分の心の中にイエスがおられることに気づいたとき、私たちは初めて自分が誰であるかを知り、自分を愛せるようになる。それと同時に、出会う人々の中におられるイエスに気づき、その人を愛せるようになるということだ。被造物に対する愛は、被造物のうちに隠れた神、イエスとの出会いから始まるというキリスト教信仰の基本を、ナウエンはとても分かりやすく解き明かしている。
最後の手紙でナウエンは、「人生において何をするにしても、心の中のイエスの声に耳を傾け続けましょう」と甥に勧める。それが実現したとき、もはや「予測可能なこと」は一つもなくなるが、同時に「どんなことも可能になる」からだ。進むべき人生の道は、イエスがすべて示してくれる。イエスの声に導かれて進む限り、迷子になることはない。自分の体験から、ナウエンはそう確信していた。
全体として、多くのキリスト教徒が共感できる内容と言っていいだろう。この本を通して、信仰のバトンが次の世代へと受け継がれていくことを願わずにいられない。















