福音の急所を学ぶために!
〈評者〉郷家一二三
本書はキリスト教のラジオ放送FEBCの「聖書をあなたに」で語られた講話である。一九八五年に企画され、放送後に上下二巻で出版され、三四年が過ぎた。今回、新装合本版として表紙は新しくされた。手にして読み出すと、信仰の本質を問いかけてくる迫りと、それに明確にこたえる言葉とが、新鮮に響いてくる。私にとって、この三十年間、本書は座右の書であり、説教準備のたびごとに読んできた。新装合本版となって、重く真っ白な新本を手にすると、講話を語られた加藤常昭先生の声が聞こえてくるような思いになる。
「ハイデルベルク信仰問答」と初めて出会ったのは、説教塾の学びの場であった。問一の「ただひとつの慰め」を知った喜びは忘れられない。すぐに牧会で用いようとして、いろいろに試みては失敗を繰り返してきた。二十年前の教会の研修会では抜粋版をつくり、集中して学んだ。求道中の父と母が参加してくれて、その後、洗礼を受けた。私は新しく目が開かれた喜びを感動して語っていた。コロナ禍で教会の礼拝者が減り始めた時は、礼拝を五回に分け、説教は短く語る中で、この問答を週報に掲載し、恵みを知ってもらおうとした。しかし今思うと聞き手に届かなかったし拒まれた。「研修内容が難しい」「今日の説教テキストと関連がない」「学校の授業のようだ」。感激のあまり安易に紹介した自分の愚かさを知った。
本書で、著者の加藤先生の語り方はわかりやすく説得的である。ラジオに耳を傾ける聴き手を想像し、テキストを持たない人でも、その心に届くように、分かりやすく心を込めて語り掛けている。「あなたに」届けたい思いと配慮にあふれている。特に最後の祈りは、聞かれた人の心に生まれてくる神への求めを執り成すようにして祈られている。多くの人は自分の祈りとして「アーメン」と祈ったと思う。放送後の反響は大きく、二冊の書物として発行された。
今回、その二冊を新装合本版として教文館が出版した意図は何だろうかと考えている。加藤先生が召されて二年たつ。先生との車中での会話を思い出す。コロナ後の教会の衰退傾向に対して、何とか回復を目指して励んでいるが、なかなか難しいと、諦めかけていた私に、最後にぽつりと言われた。「日本の教会はコロナに勝てるだろうか」。
信仰の恵みを明確に言い表す説教と福音理解が今求められている。日本と世界は、生死を貫いてキリストのものとされている唯一の慰めを知らない。混乱の根本にある人間の罪の惨めさを知らない。人々は老いも若きも、人生にとって不可欠な福音の真実を聞きたがっている。「急所」という言葉が繰り返される箇所がある。問四五の復活の箇所と、問五三の聖霊の箇所にもある。今年のイースターとペンテコステでは、主イエスの復活と、聖霊なる神について、問答を引用して説教した。説教に教理的な背骨が与えられ、明確な説教となった。今こそ福音を、はっきりとした言葉として受け取り、心に届くように語り告げる時が来ている。
本書を書斎に、カバンに、座右に備え、そして講壇においては著者の語りの声に学んで、福音をすべての人の心に届け続けたい。













