マインドフルネスを活用し、心と体を整える黙想を!
〈評者〉柳田敏洋
この本の大きな特徴は、聖書の言葉の黙想にマインドフルネス瞑想を活かしたところです。
まず、本の装幀がとてもよいです。革張りの装幀を思わせるシックな淡いブラウン色のカバーで、手に取ることができるサイズで、年間を通じて使うプライベートな手帳を思わせ、触り心地もよいものです。
この本の中には150の黙想が、それぞれ横書きで、2頁ごとに紹介されています。左頁の冒頭に聖書の言葉が載せられていて、その聖書について黙想のヒントが続きます。右頁には実践としてマインドフルネス瞑想の1種類が紹介され、気付きを書くスペースも用意されています。毎日の実践のためによく工夫されたレイアウトです。
著者のアイリーン・クレイゲルは臨床心理学博士で米国ミシガン州のカルヴァン大学でカウンセリングとウェルネスのためのセンター長を務めており、長年マインドフルネス瞑想を実践してきたクリスチャンです。著者はマインドフルネス瞑想の実践の中で鬱から癒されたようです。
キリスト教の黙想というと心と頭を使う祈りが中心で、体はほとんど顧みられませんでした。一方、1970年代に上座部仏教由来のヴィパッサナー瞑想が北米に伝わり、宗教色を除いたマインドフルネス瞑想が開発されました。医療やカウンセリングの現場で鬱や種々の依存症などの再発防止に有効であることが知られるようになり、世界に普及しました。思い込みや怒りと一つになってしまう自我に対し、マインドフルネスの「今ここ」の価値判断なしの気付きが、自我からの解放に有効であることが明らかとなったからです。
これは、つい自我から祈ってしまうキリスト教の祈りに対しても有効なはずです。私はこれを自分の専門であるキリスト教的ヴィパッサナー瞑想の体験からよく分かるようになりました。
紹介されているマインドフルネス瞑想は、ボディスキャン瞑想、座る瞑想、移動瞑想、慈しみと祝福の瞑想などよく知られた瞑想法で、11種類掲載されています。
内容について具体的に見ていきましょう。例えば、「黙想4」では「私たちの父なる神と主イエス・キリストから、恵みと平和があなたがたにありますように」(コリントの信徒への手紙二1:2)を祈るのに「座る瞑想」から呼吸に注意を向けるエクササイズを行います。呼吸に集中し、鼻の下で感じる温度変化や、おなかが膨らんだりへこんだりする感じなどに気付くようにします。これを3分程度おこないます。そうして著者は「あなたが何に気付くにせよ、神の恵みと平和は、一つ一つの息と共に差し出されています」と述べ、呼吸と共にある神の恵みと平和を感じるように導きます。
150の黙想の内容は多岐にわたっていて、私なりにそれぞれテーマを付けられると感じました。「すでに届いている神の赦し」(黙想32)、「弱さの観察」(同61)、「内なる批評から離れる」(同72)、「嫌な相手を思いやる」(同109)、「料理の奇跡に気付く」(同126)、「隣人愛の瞑想」(同143)、「内なる神の泉に目覚める」(同150)などです。本書は「黙想32」のように番号表示だけなので、そこにテーマも表示されていたら、より使いやすいものになったのではと思いました。
ストレスに巻き込まれやすい現代社会で信仰を深めるためには心身を統合する祈りが求められています。それを助けてくれるお勧めの一冊です。













