子どもと共に育つ教会を目指して
〈評者〉レオン蔡香
子どもたちや若者が集う教会は、生き生きとした命とエネルギーにあふれています。しかし、実際に子どもたちと接すると、大人が戸惑うような行動に遭遇することも少なくありません。「子どもは教会の宝物」と信じていても、その宝物をどのように守り、どう愛せばよいのか迷う瞬間もあるのではないでしょうか。そんな時に心強い助けとなってくれる良書が出版されました。著者の村上先生は、ご自身が教会学校で育てられた経験をもち、スクールカウンセラーとして長年子どもたちに向き合ってこられました。その豊かな経験と最新の心理学的知見に基づき、読者にあたたかく語りかけながら、困難な場面での具体的な解決のヒントを与えてくれます。
本書の前半では、子育てにおける中心的な課題について語られています。例えば、子ども特有の考え方、子どもが本当に必要としていること、褒め方や叱り方、子どもとの距離感など、子育てにおける永遠のテーマが並びます。各課題について、子どもの視点でしか見えない世界に目を開かせ、何が本当に大切なのかを整理してくれます。各章は短いので、子育てに忙しい親御さんにも読みやすく、悩みや疲れを抱えた心がほぐれ、行き詰まりを感じた時には、解決の糸口を見つけることができるでしょう。また、子育て世代の周囲にいる人々にとっても、親御さんたちを支えるためにできることを見いだせる内容となっています。
後半では、教会学校における子どもたちとの関わりに焦点が当てられています。まず、一般の学校とは異なり、競争も成績もなく、子どもたちが「評価される必要のない場所」としての教会学校の特別な役割が明確にされます。そこは、神さまや聖書、祈りについて教えられる場であると同時に、一人ひとりがありのままに受け入れれ、愛され、各自のペースでの成長が見守られる場所です。この役割を果たすために、教会学校が子どもにとって居心地のよい場所であることが何よりも大切だと、著者は語ります。その理解に基づいて、教会学校で遭遇しがちな「困った行動」について、具体的な例が取り上げられています。そして、その行動の背後にある子どもの心や背景、そうした行動に至る理由が丁寧に解き明かされ、実践的な対応策が提案されています。例えば、落ち着きのない子、ふざけてしまう子、マイルールにこだわる子、嘘をついてしまう子など、それぞれの子どもを理解し、大切にするとはどういうことかを、著者と共に考えることができるでしょう。
子どもを育てるとは、大人とは異なる世界を持つ子どもを知り、尊び、一人ひとりのニーズに合わせて関わっていくことです。それを親御さんだけで担うのではなく、信仰の共同体の祈りと助けと協力の中で共に担っていくことによって、親が親として、大人が大人として成長し、子どもも大人も共に育つ教会の未来が開かれていく──本書はそのことを示唆し、その道を歩むための具体的な手引きとなってくれます。子どもと共にあり、共に育つ共同体を目指すすべての教会、すべての方に、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。













