『本のひろば』は、毎月、キリスト教新刊書の批評と紹介を掲載しております。
本購入の参考としてください。
2013年9月号
出会い・本・人
本と人生(菊地順)
本・批評と紹介
- 『ニューセンチュリー聖書注解 コヘレトの言葉』R.N.ワイブレイ著、日本キリスト教団出版局―(小友 聡)
- 『良き力に守られて』村上 伸著、日本キリスト教団出版局―(山本裕司)
- 『女と男のドラマ』宮本久雄他編著、日本キリスト教団出版局―(石井智恵美)
- 『7172』ネヴィル・タン著、ヨベル―(廣瀬 薫)
- 『キリストの体である教会に仕える』齋藤孝志著、ヨベル―(小林重昭)
- 『タイムっち』岡田 明 作、キリスト新聞社―(久保木 聡)
- 『現代聖書注解 哀歌』F.W.ダブス=オルソップ著、日本キリスト教団出版局―(小友 聡)
- 『十字架と復活への道』大宮 溥著、教文館―(松本敏之)
- 『アウグスティヌス書簡集1、2』教文館―(出村和彦)
- 『キリスト教教育と私 前篇』塩野和夫著、教文館―(中根広秋)
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編集室から
富士山が世界遺産に登録された。今後、登山者が増えそうであるが、私は十年ほど前に登山を済ませた。その時は五十才になる直前で、体力的には自信があったが、念のため「中高年向きツアー」に参加することにした。これが成功した。
案内書に装備を整えてくださいとあるので、神田の登山専門店に行くと、最新のヤッケ、リュックサック、本格的な登山靴を勧められた。ずいぶん値の張るもので、「素人に高額商品を買わせるつもりか」と腹も立ったが、気弱な私は言われるままに買ってしまった。これが成功した。
いよいよ登山の日となる。ガイドさんから最後に、「無事に帰って来たければ、私の言うことに従ってください」と念を押された。不思議に思ったが、山に無知な私は「必ずそうしよう」と決心した。これも成功した。
つづれ折の坂をゆっくり登って行くと次第にもどかしくなってくる。一気に直登した方が楽じゃないかと思いつつ、ガイドさんの後に着いて行く。休憩になるとガイドさんが「荷物を担いだまま、立って休んでください」と言う。荷物を下すと、再び担ぐのに体力を消耗するらしい。リュックを下したい気持ちを抑えて、立ったまま休憩した。しかし三回目の休憩の時、事が起こった。メンバーの数人が、荷物を下してしまったのである。しかも、四回目の休みの時には、約半数の人が荷物を下し、座り込む事態となった。皆がそうするなら私も座って休みたかったが、「ガイドさんの指示に従う」と決めた以上、荷物を担ぎ、立ったまま休んだ。しかし、そのお陰で最小限の疲労で富士登山を終えることができた。登山専門店で買った高価な装備が功を奏したことも言うまでもない。安価なビニール合羽を着た人は、体が蒸れて下着を濡らし体力を消耗してしまったのである。
人の言うことを無批判に受け入れるのは危険であるが、とはいえ専門家の言うことは一応聞いておいて間違いないと思った。(寺田)