『本のひろば』は、毎月、キリスト教新刊書の批評と紹介を掲載しております。
本購入の参考としてください。
2013年10月号
出会い・本・人
ペスタロッチーへの共感(阿部洋治)
本・批評と紹介
- 『教皇フランシスコ』マリオ・エスコバル著、新教出版社―(兼子盾夫)
- 『イエス入門』リチャード・ボウカム著、新教出版社―(小嶋崇)
- 『王道』王艾明著、新教出版社―(朴憲郁)
- 『神学の起源』深井智朗著、新教出版社―(田上雅徳)
- 『コーランの中のキリスト教』J・グニルカ著、教文館―(戸田聡)
- 『カトリック入門』L.S.カニンガム著、教文館―(岩島忠彦)
- 『はじめてのウェスレー』W.J.エイブラハム著、教文館―(岩本助成)
- 『人格と人権』大木英夫著、教文館―(近藤勝彦)
- 『我はまことの葡萄の木』川田靖子著、教文館―(森田進)
- 『二つの日本』オードリー・サンスベリー・トークス著、聖公会出版―(渡辺憲司)
- 『イエスの言葉100選』河合裕志著、日本キリスト教団出版局―(朴憲郁)
- 『信仰論 下巻』シュライエルマッハー著、シャローム印刷―(倉松功)
- 『教会では聞けない「21世紀」信仰問答I』上林順一郎監修、キリスト新聞社―(徳善義和)
- 『フィンランドの木造教会を訪ねて』竹内晧著、リトン―(清重尚弘)
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編集室から
「所有は最悪の束縛。」もう何年も前に読んだ小説の主人公の台詞に、いくつも思い当たるところを感じ、今でも衝撃を抱いている。
そして連鎖するように別の本で読んだ、「人は旅人でなければならない」という言葉を思い出す。人生は軽やかに、持ち物は鞄に収まる分だけで良い。いつでも旅に出かけられるように。
二つの事柄はさらに私の中で、聖書の「空の鳥 野の花」の教えへとつながっていく。
『旅の絵本Ⅱ』(安野光雅画/福音館書店)を読んだことがある。何度も版を重ねている本なので、ご存知の方もいらっしゃることと思う。文字のない絵だけで構成されている本だけれど、絵は語る力を充分もっている。
俯瞰から眺める町並みと行き交うたくさんの人物、そして旅人。丁寧に観ていくと小さなスペースではあるが、必ず一画面のどこかに、イエス・キリストを表す絵を見つけることができる。さらに注意して観ていくと、ページをめくるごとにストーリーが展開されていき、一冊でキリストの生涯が綴られていることに気づく。
一見何の変哲もない風景。見過ごしてしまっても支障をきたさない。知っている人、探している人、望んでいる人、あるいは、待っている人だけに特別な風景となって現れる。
見つけ出すという行為は、旅をしているときの、一期一会を大切にする感覚に似ているような気がする。
もしかしたら、日々の些細な不安に捉われている時も、本当はいろいろな場所で、イエスさまの気配に遭遇しているのかもしれない。
日常生活の営みに溶け込むように描かれる『旅の絵本Ⅱ』のイエスさまは、見つけた瞬間、心がほのかな喜びに満たされていることを感じる。 (吉崎)