『本のひろば』は、毎月、キリスト教新刊書の批評と紹介を掲載しております。
本購入の参考としてください。
2013年12月号
出会い・本・人
わが身の思いと重ねつつ(松平信久)
出版記念講演
『私は私らしく生きる 水野源三詩集』『水野源三精選詩集 わが恵み汝に足れり』
「水野源三と三浦綾子」を語る(森下辰衛)
本・批評と紹介
- 『悲しみに寄り添う』ケルスティン・ラマー著、新教出版社―(島薗進)
- 『偽名書簡の謎を解く』辻 学著、新教出版社―(永田竹司)
- 『教会づくり入門』榎本保郎著、教文館―(山北宣久)
- 『わたしはどこへ行くのか』佐々木勝彦著、教文館―(西谷幸介)
- 『民衆と歩んだウェスレー』清水光雄著、教文館―(野村誠)
- 『バッハ万華鏡』川端純四郎著、日本キリスト教団出版局―(徳善義和)
- 『ガリラヤとエルサレム』E.ローマイヤー著、日本キリスト教団出版局―(中山貴子)
- 『福音の再発見』スコット・マクナイト著、キリスト新聞社―(小渕春夫)
- 『信仰生活の手引き 礼拝』越川弘英著、日本キリスト教団出版局―(小栗献)
- 『境界を超えるキリスト教』明治学院大学キリスト教研究所編、教文館―(神田健次)
エッセイ
随筆・詩歌『虹の橋』のはしがきとして(近藤蓉子)
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編集室から
「犬が人を咬んでもニュースにはならないが、人が犬を咬むとニュースになる」という言葉がある。これはニュースとして取り上げられる出来事はその事象の重大さよりもその新奇さに負うところが大きい、ということを示している。新奇さと重大さが重なると出来事のニュース性はよりいっそう大きくなる。2011年3月11日に起きた東日本大震災はまさにそのようなものであった。しかし、事態に進展がなく目新しさがなくなると、どんなに衝撃的であったニュースでも、やがてそのことに対する忘却が始まり、たとえば、2020年のオリンピック競技の東京での開催決定のような、新しい出来事によって取って代わられる、ということでもある。大量の情報が絶えず流入してくるのだから、新しい出来事が人々の耳目を集め、古い出来事が忘れ去られていくのは、いわば止むを得ないことである。
しかし、それでも忘れてはいけないことがある。だから忘却という自然の流れにあえて抵抗する努力が時には払われる。それが「東北の被災者のことを忘れてはいけない」という訴えになって現れたりする。毎年八月になると様々な形で「平和特集」がテレビや新聞などで企画されるのも、ヒロシマとナガサキに大量殺戮兵器が投下されたことと、残虐な第二次世界大戦のことを忘れまいとするためである。キリスト教の礼拝の中での聖餐(主の晩餐)という儀式も「わたしの記念としてこのように行いなさい」というイエスの言葉に基づいている。
毎週、毎年というわけではないが、出版界でも「生誕○○年」「没後××年」という節目ごとに記念出版が行われることがある。今年の場合で言えば、『新渡戸稲造事典』と『「ハイデルベルク信仰問答」入門』が、それぞれ「没後80年」「450年」を記念して出版された。
私たちはついつい流行を追いかけてしまいがちだが、「温故知新」という言葉が示すようにたまには過去を振り返ってみることも必要である。 (中川)