『本のひろば』は、毎月、キリスト教新刊書の批評と紹介を掲載しております。
本購入の参考としてください。
2018年3月号
出会い・本・人
神の前に立つ(エッセイ:丹治めぐみ)
本・批評と紹介
- 『日本プロテスタント教会史の一断面』
落合建仁著、日本キリスト教団出版局―(棚村重行) - 『現代新約注解全書 第二コリント書 8―9章』
佐竹明著、新教出版社―(辻建) - 『イエスの譬え話2』
山口里子著、新教出版社―(水島祥子) - 『ローマ帝国のたそがれとアウグスティヌス』
磯部隆著、新教出版社―(髙橋優子) - 『こころの深呼吸』
片柳弘史著、教文館―(沢知恵) - 『エイレナイオス5 異端反駁V』
大貫隆訳、教文館―(鳥巣義文) - 『キリストは再び十字架にかけられる』
ニコス・カザンザキス著、教文館―(柳田富美子) - 『改革派教会』
オリヴィエ・ミエ著、一麦出版社―(井上良作) - 『説教聴聞録』
門叶国泰著、ヨベル―(川染三郎) - 『聖書道しるべ』
関田寛雄著、キリスト教図書出版社―(木下宣世) - 『スピリチュアルケア研究』
窪寺俊之著、聖学院大学出版会―(西平直) - 『新訳 聖潔のしおり』
サムエル・ブレングル著、救世軍出版供給部―(藤本満)
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編集室から
ヘンリ・ナウエンの本を少しずつ読んでいる。再読のものもあるし、新しく読んでいるものもある。昨日は『傷ついた癒し人』(日本キリスト教団出版局)に、併録された「生きた想起者」を読んだ。どれくらい読まれているのだろう。よく知られた「傷ついた癒し人」の陰に隠れていたら、残念だ。
こういう問いから始まる。「牧師を支える霊的な力は何なのか。牧師が退屈で無愛想で熱意のない官僚主義者になることから、すなわち、たくさんの計画・案件・会合の約束などを持っていながら、働きのさ中で意気銷沈してしまうことから、牧師を守るものは何なのか」。
ここを切り口に、ナウエンは、牧師の仕事(ミニストリー)と霊性(スピリチュアリティ)の結びつきを再確認しよう、と読者を誘っていく。というのも今、牧師たちは、自分の仕事を、霊性から(すなわち祈りから)切り離す誘惑に陥ってしまっているから。「祈りはぜいたくだ。そんなひまはない。カトリックには例えばトラピスト会修道士のように祈りに専念する人々がいるが、彼らはミニストリーには携わっていない」、そんなふうに考える過ちに陥っているから。
ナウエンはそういう現状に向けて、言う。牧師は、「イエス・キリストを生き生きと思い起こさせる者」すなわち、「イエス・キリストの想起者」だ、と。そして牧師の仕事は、社会における有用性によってではなく、イエスを想起させることを第一の指針として整えられるべきだ、と。
そこから牧師の仕事が再検討されていく。例えば教会員の痛みを癒すとはどういうことか、牧師の不在の意味、あるいは祈りのテクニックの重要性。
60ページほどのいっきに読める分量だが、汲めども尽きぬ豊かさをたたえている文章だと思う。(土肥)