『本のひろば』は、毎月、キリスト教新刊書の批評と紹介を掲載しております。本購入の参考としてください。
2019年10月号
- 出会い・本・人 蔵書に隠された謎 (エッセイ:陣内大蔵)
- 特集 「キリスト教の霊性」を学び直すならこの三冊! 打樋啓史
- 本・批評と紹介
- 『若者に届く説教』
大嶋重徳著、教文館―(関川泰寛) - 『橋をつくるために』
教皇フランシスコ他著、新教出版社―(山岡三治) - 『ジョヴァンニ・バッティスタ・シドティ』
M.トルチヴィア著、教文館―(鈴木範久) - 『ぬくもりの記憶』
片柳弘史著、教文館―(小島誠志) - 『〈グローバル・ヒストリー〉の中のキリスト教』
ミラ・ゾンターク編、新教出版社―(加藤喜之) - 『アレテイア エレミヤ書』
日本キリスト教団出版局編―(野村稔) - 『かみさま、きいて!』
大澤秀夫他監修、日本キリスト教団出版局―(小見のぞみ) - 『人間の本性』
ラインホールド・ニーバー著、聖学院大学出版会―(千葉眞)
- 『若者に届く説教』
- 既刊案内
- 書店案内
編集室から
『教会生活の処方箋』(辻宣道著・日本キリスト教団出版局)という本を読んでいる。初版が一九八一年、とあるから、私の生まれる十年以上も前だ。最近出版された教会形成についての本のモデルにもなったという。
「聖日軽視は信仰生活の赤信号」「献金は信仰のバロメーター」など私には時代錯誤? と感じられる見出しも目立つ。他にも子育て、教会員の交わりについての苦言や、謝儀に至るまで、現役の牧師がよくここまで、と思うようなことが詰まっている。また現在なら「考えてみる必要があるのでは?」などと書くだろうところも、ストレートに「けしからん」「この不謹慎」と……。しかしこの厳しい言葉たち、不思議と嫌気がしない。むしろ新鮮で、良い意味で痛いところを突かれ、著者と対話しているような読後感を味わえた。
社会が今、言葉に求めているのは、批判を避けるための配慮や、誰も傷つけない、やさしさのように感じる。誰とも争わず、否定せず、尊重し合う。聞こえはよいが、もしかしたらその空気が妥協や忖度を生み、逆に、ヘイトなど暴力めいた言葉が人を惹きつけているのかもしれない。
本書の著者も、「乱暴な言い方」をしたと認めながらも、あとがきでこう語っている。「ひとにはひとの立場があり、私には私の立場があります。それをつきあわすことの中で歴史の前進ははかられると考えます」。正しいと思うことをはっきりと表現せよ。セピア色になった本は、そう語ってくれたように思う。(桑島)