『本のひろば』は、毎月、キリスト教新刊書の批評と紹介を掲載しております。
本購入の参考としてください。
2017年1月号
出会い・本・人
父の教育と聖書(下田尾治郎)
本・批評と紹介
- 『一分間の黙想 祈りの力』
E.M.バウンズ著、日本聖書協会―(平林冬樹) - 『クリスマス』
ヤン・ピエンコフスキー絵、日本キリスト教団出版局―(藤本朝巳) - 『ソクラテスの死とキリストの死』
ベルトールト・クラッパート著、新教出版社―(寺園喜基) - 『島の小さな教会』
多摩美術大学環境デザイン学科編著、新教出版社―(加藤常昭) - 『改革派教義学5 救済論』
牧田吉和著、一麦出版社―(坂井純人) - 『信仰生活の手引き 祈り』
左近豊著、日本キリスト教団出版局―(広田叔弘) - 『聖書の教える金持ち父さん、貧乏父さん50』
木下和好著、ヨベル―(市村和夫) - 『うたであそぼうあそびうた50』
鈴木明子作詞・作曲、ヨベル―(古屋博規) - 『おいで子どもたち』
斎藤惇夫文、日本聖公会―(深井智朗) - 『近代日本のキリスト教と女子教育』
キリスト教史学会編、教文館―(田中智子) - 『「キリスト者の自由」を読む』
ルター研究所編著、リトン―(内海望)
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編集室から
教会学校でご父兄向けの聖書のお話を時折担当しています。お子さんが分級に出ている間、ご父兄にも聖書に親しんでいただくためのプログラムです。私にはなぜか旧約聖書の箇所がよく回ってきます。話の準備には苦労しますが、聖書に向かい合ういい機会でもあります。
旧約聖書を読んでいて混乱するのは、言っていることが逆じゃないかと思える箇所がたくさんあるからだと思います。別の書ならまだ分かりますが、同じ書の中でもちょっと前に言ったこととまるで逆のことが言われていたりすると混乱するばかりです。
そんな混乱が少しは整理できるかと思い、ある旧約聖書学者の講演会に行ってきました。ある預言書を取り上げて、異なった時代に書かれた様々な考えの文章が複雑に絡まり合って全体が構成されていることを解き明かすものでした。
質疑応答の時間になり、質問しようかどうか迷っていたら、ある方が私の聞きたかったことを質問してくれました。なぜ、この預言書はそんな複雑な構成になっているのか? もっと読みやすい、分かりやすい構成にできたのではないか?
講演者はこう答えました。自分と異なる考え方を消してしまうのではなく、様々な考え方を並置していくという伝統があるように思う。そして、それは本当に素晴らしいことだ。
パウロじゃありませんが、目からウロコのようなものが落ちる思いがしました。私たちは日々の生活において様々な問題や課題に直面し、それに対する答えを求めます。文章を書くときには首尾一貫性が求められます。もちろん、それはそれで大切です。しかし、私たちの社会も、私たち自身も、すっきりした答えを出し、矛盾のない立場を貫くにはあまりに複雑ではないでしょうか。分からないことに耐え、問いが複雑化するような歩みのうちに思いがけない宝と出会う。そんなふうに旧約聖書を読み、日々を歩みたいものです。 (はくた)