『本のひろば』は、毎月、キリスト教新刊書の批評と紹介を掲載しております。
本購入の参考としてください。
2016年5月号
出会い・本・人
飛び散る火花(増田祐志)
本・批評と紹介
- 『キリスト教資料集』
富田正樹著、日本キリスト教団出版局―(鬼形惠子) - 『暗い森を抜けて』
ダンテ原作、新教出版社―(佐藤裕子) - 『近代日本の預言者』
J.F.ハウズ著、教文館―(村松晋) - 『翼をもつ言葉』
W.ウィリモン著、新教出版社―(小野静雄) - 『会衆主義教会の使命』
水谷誠監修、キリスト新聞社―(吉岡恵生) - 『神学の小径Ⅲ』
芳賀力著、キリスト新聞社―(芦名定道) - 『教義学論文集1』
大崎節郎著、一麦出版社―(多田滉) - 『戒規か対話か』
北村滋郎牧師の処分撤回を求め、開かれた合同教会をつくる会編、新教出版社―(森野善右衛門) - 『平野 恒』
亀谷美代子著、大空社―(兼子盾夫)
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編集室から
カール・バルト『私にみ言葉をください』(新教出版社)を最近入手しました。面白いです。
邦訳の初版は1974年(私の生まれた年!)ですから、すでによく知られた本だと思うのですが、改めて紹介しますと、本書はバルトの『教会教義学』の最終巻『総索引』に収録されていた「説教の手引き」の翻訳です。本書の編者ヘルムート・クラウゼは、ドイツ福音主義教会が使用している聖書日課に従って、膨大な『教会教義学』から約800か所を抜粋し、これを主日ごとに配置しました。
つまりこの日課で説教する説教者にとっては、説教すべき箇所について『教会教義学』が何を言っているかが概観できるという、説教準備に便利な本です。この日課に馴染みがない私のような者にとっても、やはりとても有益です。
本稿を書いているのは受難節なのですが、私はゲツセマネの祈りを学ぶ必要がありました。そこで本書をひもときますと、聖木曜日のテキストに選ばれていました。
選ばれたバルトの言葉はこう始まります。「イエスは、福音書の物語の一部で、人間に対して行なわれる審きの神的主体として、示されているが、この神的主体は、少なくともゲツセマネの場面以後は、自らこの審きの客体となり給う」。
なるほど! そう考えると、福音書全体における、この場面の特別な重要さが浮かび上がってきますね。主体から客体への「逆転」という神の計画の受け容れ難さ。主イエスが死ぬばかりに悲しんだのは、そのゆえだったと知らされます。
福音の鳥瞰図を示した上で、ズームアップして当該箇所に迫っていくという感じ。その大きな視野が、注解書とはまた違って、面白いです。邦訳『和解論』の該当ページも示されていたので、続きを読まねば。 (土肥)