魅力的でユニークな書


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魅力的でユニークな書が訳出、出版されたことを喜びたい。
本書の魅力とユニークさは、まず、有力な出版社で活躍
した著名な編集者であった著者エリザベス・シフトン
(一九三九―二〇一九)が、二十世紀を代表するアメリカの
神学者ラインホールド・ニーバーの娘であることにある。
ニーバーのよく知られた「平静の祈り」の背景と想い出を
縦糸に、父ニーバーをめぐるさまざまな出来事と各界の著
名人たちとの交わりと、第二次世界大戦中のヨーロッパを
も含むその時代の世界の動向を横糸に、エリザベスの目に
映った二十世紀後半の景色が独特な筆致で生き生きと表現
されている。さらに、本書には、父ニーバーを慕う思いが
にじみ出る暖かい描写と、世界の動向に対する鋭い洞察と
が、せめぎ合うように息づいている。
そして何より、ニーバーが一九三二年から一九五五年ま
でマサチューセッツ州ヒースに所有していた別荘「ストー
ン・コテージ」(訳書では「石のおうち」)と、ヒースの土地
柄へのエリザベスの哀惜の念が全巻を通じて伝わってくる。
ニーバーが有名な「平静の祈り」をささげたのは、一九四
三年の夏、この山村の教会の礼拝においてであった。この
祈りについては、その歴史や作者や文言をめぐってさまざ
まな誤った情報が錯綜してきたし、それは今も変わらない。
それらの情報を批判するエリザベスの激しい口調は、エリ
ザベスがいかに父の祈りの言葉を大切にしてきたかの表れ
であろう。
この祈りについて本書に特徴的なのは、それを実存的個
人的な意味よりもそれを踏まえてではあるが、一貫して
「困難を極め、分断された時代における数々の闘争と危難」
とりわけ「同盟国が枢軸国に勝利する見込みも定かではな


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