荒瀬牧彦 編 コロナ後の教会の可能性 (家山華子)

今、教会が問われている
〈評者〉家山華子


コロナ後の教会の可能性
危機下で問い直す教会・礼拝・宣教

荒瀬牧彦編
A5判・148頁・定価1650円・キリスト新聞社
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「今、教会が問われている」。この問いを抱えつつ目の前の課題に向き合ってきた。五月に新型コロナの感染症法上の位置づけが五類に引き下げられ、教会でもこれまでできなかった活動を徐々に再開しつつある。それと同時に「今、教会が問われている」という感覚が薄れ、いつの間にか通り過ぎようとしているのではないだろうか。本書は、二〇二〇年秋から日本クリスチャン・アカデミーの共同研究として教派や年代の異なる七名のメンバーによって対話が重ねられてきた一つの成果である。新型コロナの様々なフェーズを経験しながら「この時」を刻むべく互いに刺激し合って生み出された言葉が、読者に刺激を与える。

 まず、東中野教会牧師の浦上充氏は、オンラインを活用した礼拝の様々な方法を整理した上で、ともすると配信する側の自己満足に陥りがちなところを、受け取る側の視点に立ち「私はこの礼拝に参加しているという感覚」が大切であると指摘し、オンラインを前向きに活用した実践の可能性について論じている。石橋教会牧師の仲程愛美氏は、コロナ禍で変化せざるを得なかった教会の戸惑いをありのままに綴る。そして教会のオンライン化は、教会の敷居を低くすることになったかはまだ分からないとしつつ、教会が福音を届けるために教会のかたちが変化していることを前向きに捉えている。高槻日吉台教会牧師の吉岡恵生氏は、オンラインを用いることは、これまで「礼拝の外に置き去りにしてきた」病床にある人や仕事で礼拝に集えない人などへの牧会的配慮の問題であることを改めて認識させる。また、周到に準備されたオンライン聖餐式の実践を紹介し、オンライン洗礼式の可能性をも指摘する。カトリック名古屋教区司祭の片岡義博氏は、「オンライン教会学校」の取り組みを紹介し、地方の教会や小規模教会とも共有できる可能性を示唆する。また、カトリック教会の「霊的聖体拝領」の考え方や「初聖体クラス」という信仰教育プログラムについても紹介している。マイノリティ宣教センター主事の渡邊さゆり氏は、「コロナ後」という言葉を発することの慎重さを求め、在留外国人への差別やヘイトの増大、女性への暴力がより過酷になっていると指摘。今痛みを抱え続けている人々から教会は学ぶべきであると訴える。そして今こそイエスの宣教実践へ引き戻される必要があると提言する。
 大規模なアンケート調査の結果、特に自由記述からは、一人一人に生じた変化がありのままに見えてくる。これをもとに同志社大学の越川弘英氏は「キリスト教というもの、福音というものを、あらためてもう一度見つめ直し、自らのあり方と立ち位置、そして進むべき方向を定め直す」ことを提言している。関西学院大学の中道基夫氏は「オンライン礼拝で問題にすべきなのは、対面の礼拝のリアイティではなく、神の国のリアリティである」として、他者と共にいることを実感できる礼拝を目指さなければならないと提言する。最後に、編者の荒瀬牧彦氏は、各現場で討論する機会をもつこと、それを反映した今後のアクション・プランを立て、記録することの提案をする。教会を問い直し、変化していくきっかけとして、本書が大いに活用されることを願っている。

書き手
家山華子

いえやま・はなこ=日本キリスト教団箕面教会

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