
阿部志郎の著書『社会福祉の思想と実践』(中央法規、 2011)は、私の社会福祉観を変えた思想・哲学書である。阿部先生(以下敬称略)は、筆者の恩師である同志社大学の故嶋田啓一郎名誉教授にとって掛け替えのない盟友であり、社会福祉界における偉人である。2026年2月1日にはめでたく百寿をお迎えになられる。阿部は、横須賀基督教社会館長として50年間地域福祉を牽引するのみならず、国内外の大学、政府審議会、学会、専門職団体において、トップとしての要職を務め、顕著な功績を挙げている。
阿部は、「愛とは、他者への働きかけを通して、自己の実存が支えられ、自己と他者がともに生きる関係を創造することである」と述べ、彼の前任者である宣教師のエベレット・トムソンの精神である「よき隣人として愛しなさい」、「隣人を放っておけない」を胸に刻み社会福祉の道を歩んできたという。そのことは、嶋田の愛唱句「信仰・愛・希望のうち最も大いなるものは愛である」、「もはや我生けるにあらず、キリスト我が内にありて生けるなり」に通じる。マザーテレサは「愛の反対は憎しみではなく、無関心である」と述べたが、キリスト者にとって「隣人を愛すること」は「神を愛すること」でもある。
人権(人は誰もが生まれながらにして、その能力を最大限発揮できるように、政府はそれを支援する義務があり、その支援を要求するのが権利)を重視するヒューマン・サービス(人間福祉)は「人間が直面する諸問題に全人的に対応し、社会環境を整え新しい文化の創造を目指す」と阿部はいう。そして、キリスト教社会福祉の使命は「人間を真実に人間たらしめること、すなわち、いと小さき者の一人が尊ばれる世界を作るため、福祉実践をもって、生きる喜びと明日への希望を隣人に伝えるこ
と」とし、阿部独自の社会福祉の思想と哲学を垣間見るのである。
(よこやま・ゆずる=北星学園大学特任教授)














