【出会い・本・人】児童書からキリスト教史まで


 本との出会いに導いてくれたのは母でした。団地に住んでいた頃、母はクリスチャンのママ友から児童書を紹介して貰っていたようです。ある時期から本棚にローラ・インガルス、アストリッド・リンドグレーン、C・S・ルイスなどが並ぶようになり、寝る前に読み聞かせてくれました。
 小学3年の冬に戸建てに引越し、友達が減り、本を読むようになりました。一番読書したのは小学生の時です。と言っても、読んでいたのは名探偵ホームズや怪盗ルパン、それに『三銃士』などでした。
 受験期にトルストイ『戦争と平和』を読破しましたが、これは逃避でもありました。世間知らずの青年ピエールに共感しながら「歴史における個人の役割」といった歴史哲学的テーマを考えるきっかけにもなりました。  大学では英国近代史の演習に加わり、越智武臣『近代英国の起源』を読みました。その後の近代英国史研究に影響を与えた著作でした。資料に基づき通説を批判する歴史学の方法をこの本からも教えられました。
 卒業後、高校で非常勤講師を二年務めてから、日米通算八年間、神学校での学びが許されました。ゴードン・コンウェル神学校ではアドヴァイザーであったガース・ロゼル教授からマーズデン『ファンダメンタリズムとアメリカ文化』(G. Marsden, Fundamentalism and American Culture [Oxford University Press, 1980])を紹介されました。私の出身教会は、米国の保守的プロテスタント教派から派遣され、後に独立されたコール宣教師夫妻が開拓されました。彼らの信仰の文化史的背景をこの本で知りました。
 十代・二十代に出会う良い本は一生の財産です。それで子供たちにも読書を勧めましたが、煙たがられてしまいました。思うようには行かないものです。
(とみた・ゆうじ=JECA取手キリスト教会牧師)

書き手
富田雄治

とみた・ゆうじ=JECA取手キリスト教会牧師

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