【出会い・本・人】『韓国現代史と教会史』からの巡りあわせ


 明治大学大学院の指導教授であった倉塚平教授のもとで、E・トレルチの『社会教説』を読んでいた頃、韓国民主化運動を熱心に支援していた指導教授から盛んに薦められたのが池明観著『韓国現代史と教会史』(新教出版社・一九七五)であった。
 私の専門はイギリス社会経済史であるが、本書がきっかけで、不思議なことに、教会の門を叩くことができ、著者である池先生と教会で交わることになり、教員になってからも、キリスト教史学会を通じて、韓国教会史の研究者との交わりが続いている。
 本書には、戦前戦中の日本による植民地支配のもとで、キリスト教会がナショナリズムの担い手の役割を果たしており、それが軍事独裁に抗する民主化運動に流れ込んでくるという韓国の現代史と教会史が描かれており、日本や中国におけるキリスト教の受容の違いに驚きを禁じ得なかった。教会に通って聖書を読むことを指導教授から薦められた折に、中目黒の恵泉バプテスト教会の藤田英彦牧師があえて祈祷会後に青年会による本書の読書会を開いてくれたことも、私にとっては教会の敷居を低く感じさせた一因である。
 当時東京女子大学の客員教授をされていた池先生は、恵泉バプテスト教会の特別伝道集会の講師として来会し、求道中の私を東山荘で開催される学生YMCA夏期学校に誘ってくださった。私が教員になってからもキリスト教学校教育同盟大学部会の講師を引き受けてくださり、一九八六年からは先生が晴れて帰国するまでの七年間、姜貞淑夫人とともに恵泉バプテスト教会の客員会員となり、毎週のように交わることになった。
 そんなことから、二〇〇八年に、日韓キリスト教史の研究者である徐正敏延世大学教授を前任校である明治学院大学の客員教授に招聘することができた。本書は、西洋のキリスト教の探求というルートに加えて、アジアのキリスト教との出会いというルートを用意してくれたのである。
(おおにし・はるき=東北学院院長、大学学長)

書き手
大西晴樹

おおにし・はるき=東北学院院長、大学学長

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