【出会い・本・人】「古典」の魅力(飯田 仰)

 コロナ禍前、私は職務上旅することが多くあった。長旅で読書を享受するのが習慣となっていたが、ある時手荷物検査で中身を全部出され、13冊も携帯していたのには我ながら驚嘆した。
 私は二人の人物から読書の重要性を教えられた。一人は私の父、そしてもう一人は母教会(日本キリスト教団上尾合同教会)の牧師であった秋山徹牧師である。
 父潔は聖書をこよなく愛し、傍らには常に聖書があった。聖書を読み、御言葉に聴くことを生涯大切にした人で、その父の影響を受けて私自身も聖書を学ぶようになった。
 秋山徹牧師からは神学を学ぶことの大切さを教えていただいた。長い間、祈祷会でカルヴァンの『キリスト教綱要』を講解されていたが、先生の解説を聴く度に心が燃やされる体験をした。また『熊野義孝全集』を読むことも勧められ、牧会の組織神学の重要性について深慮させられた。
 後に、秋山牧師に触発され、私もカルヴァンを耽読した。カルヴァンは聖書に精通していたが、古代教父の著作にも造詣があった。あのカルヴァンも「古典」を大切にしていたのである。そこで、カルヴァンを更に理解するためには私自身も古代教父を会得する必要性を感じた。アウグスティヌスはもちろん、意外と接点が少ないと思われているカッパドキア三教父との関連性にも私の関心が芽生えた。こうした「古典」を紐解くことで、より深遠な部分に触れられると思い、現在、講究を試みている。
 非常勤講師をさせていただいている高校や大学では、「古典」を丹念に読むことの有意性を常に強調している。今思えば、私の大学や大学院時代の恩師たちも、また愛読のC・S・ルイスも同様のことを語っていたことに気づかされる。
 後代へと語り継ぐためにも、先代から受け継いでいるものが何かを吟味する必要があると思う。そのために書物と人との出会いが主によって与えられると痛感している。
(いいだ・あおぐ=日本同盟基督教団国外宣教総主事)

書き手
飯田仰

いいだ・あおぐ=日本同盟基督教団国外宣教総主事

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