『本のひろば』は、毎月、キリスト教新刊書の批評と紹介を掲載しております。本購入の参考としてください。2024年9月号
出会い・本・人
井上良雄著『神の国の証人ブルームハルト父子』(佐々木潤)
特集 シリーズこの三冊!
エコロジーの視点から聖書を読むためのこの三冊!(鬼頭葉子)
書評/エッセイ
大串肇著『VTJ旧約聖書注解 エレミヤ書1〜20章』出版にあたって(小友聡)
本・批評と紹介
- 『ヨブ記を読もう』並木浩一 著 (塩谷直也)
- 『キリスト教古典叢書 諸原理について(ペリ・アルコーン)』オリゲネス 著/小高毅 訳 (金子晴勇)
- 『慰めとしての教会に生きる』加藤常昭 著 (小泉健)
- 『コリントの信徒への手紙二講解〔下〕』袴田康裕 著 (坂井純人)
- 『道徳的人間と非道徳的社会』ラインホールド・ニーバー 著/千葉眞 訳 (柳田洋夫)
- 『聖霊による福音宣教』松木充 著 (河野克也)
- 『ナチズムと闘った牧師』クラリッサ・スタート・デヴィッドソン 著/久野牧 訳 (武田武長)
- 『信仰生活ガイド 祈りのレッスン』柳下明子 編 (近藤誠)
- 『キルケゴールのキリスト論』鹿住輝之 著 (須藤孝也)
編集室から
NHK朝ドラ「虎に翼」から目が離せない。日本初の女性弁護士で後に裁判官となった三淵嘉子をモデルに描くオリジナルストーリー。法曹界をはじめ多くの識者も熱心に視聴し、さまざまに論評されている。
女性が一人格として認められなかった昭和初期。本当にこんな時代があったのかと目を疑いつつ、どこか現代にも通じる台詞が胸に刺さり、今なお変わらない根源的な問題に気づかされたというシーンは枚挙に暇がない。「女のくせに」「分をわきまえろ」という常套句で、声なき声を封殺してきた負の歴史は連綿と繰り返されている。
新五千円札の顔に選ばれた津田梅子を挙げるまでもなく、女性の社会進出においてキリスト教主義の教育機関が果たした役割は大きい。
他方、教会には性差別が根深く残る。牧師と結婚しただけで「牧師夫人」と呼ばれ、「教会の奥さん」「お母さん」的な存在として無言の圧力と理不尽な要求にさらされる。「神の前で正しくあれ」と、表面的な「清さ」「正しさ」ばかり重んじられ、感謝と喜びに満ちた信仰生活にそぐわない負の感情には蓋をすることに慣れてしまう。波風立てぬように物言わぬ空気や、「持ちつ持たれつ」で穏便に済まそうとする体質にも既視感しかない。
100年たっても残念ながら、無神経に「女(おんな)子ども」と言い放ってはばからない都知事候補が、無党派層を中心に165万の得票を記録するという世界に私たちは生きている。それでも執念深く、旧態依然の日本社会に「はて?」を突きつけ続けるしかない。 (松谷)
予 告
本のひろば 2024年10月号
(巻頭エッセイ)齋藤五十三(書評)齋藤五十三『信仰生活ガイド 老いと信仰』、E・ユンゲル著『義認の福音』、須藤英幸著『ルターの恩恵論と「十字架の神学」』、メアリー・タムソン著『タムソン宣教師夫人メアリーの日記』他