対話の中に未来を拓く小高からの発信
〈評者〉水口 洋

苦難の日々を心に刻み、再生へ向かって歩む
明日は必ず来る 原発被災地 小高
小高夏期自由大学事務局編著
飯島 信、小暮修也編
新書判・336頁・定価1650円・ヨベル
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本書は前年に引き続き行われた第二回小高夏期自由大学の全記録の報告書である。東日本大震災時の原発被災後、五年に及ぶ全住民避難の後、再生と復興に携わってきた福島県南相馬市小高区の地域住民の実践の思いが誌上に収録されている。昨年刊行された『心折れる日を越え、明日を呼び寄せる』(ヨベル新書)に続く、三日間の夏期自由大学での熱い議論が、そのまま文字化されている。
第一部・パネルディスカッションⅠ「小高を語る─ ─まちづくりの今」では、小高で暮らす四人のパネラーが各自の視点からまちづくりの現状を語る。現場に根差した発題は、直面する課題と考えるべき視点が的確に表現され、説得力のある提言となっている。
第二部・パネルディスカッションⅡ「原発被災地で、原発とこれからのエネルギーについて考える」では、地域住民の司会者の問いかけに復興に関わってきた三人の専門家のパネラーが発題を行い、それを受けて高橋哲哉氏の応答があり、パネラーとの対話が展開される。震災・原発被災後の小高の再生のあり方について、今も地元住民との話し合いの中で進めている現状を多面的に明らかにしている。
第三部・トークセッション「小高の起業家たちの小高への思い」では、震災後小高に定住した四人の若い起業家たちが、それぞれの想いと地域の可能性について生き生きと語っている。描く未来像に希望を見出す内容になっている。
第四部・座談会「小高で脱原発を語る」は飯島信氏・二瓶由美子氏・高橋哲哉氏の鼎談が収録されているが、二重被災地である福島の現実をどのように受け止め、何を発信できるかについて語り合っている。
一読して感じたのは第一に生きた言葉が溢れていることだ。読者を違和感なく自由大学の会場に引き寄せてくれる。発題者をはじめ語る全ての人が、地に足のついた自分の言葉で体験的な気づきを語る。その多義性や広がりが、小高への関心を深めていく。一方的な言説が飛び交うのではなく、地域に生活基盤を置き、そこで捉えた問題を語ることが、読者を一緒に考える共通認識へと誘っていく。
第二にこの地域の特殊性でもあるが、全住民避難という喪失体験を共有する人たちの郷土愛が随所で語られていることだ。それ故再生への道筋の中に、過去の記憶や地域文化を大事に考える意識が共通基盤になっている。歴史との対話を含め長い時間感覚で復興を考え、話し合いの中で住民のためのまちづくりを目指そうとしている姿が顕著に示されている。それは国が主導する開発や復興のプログラムとは一線を画し、原発事故の教訓をどう総括できるか苦悩しつつ、再生計画を進めている点にリアリティを感じた。
第三に本書のタイトルのように、苦難の中にありながらも前向きに歩み始めている住民のパワーが伝わってきた。人は人との関係性の中で人間になっていくが、まさに人々が相互依存の関係を結びながら、対話の中で未来を切り拓こうとしている姿に人間性の本質を見る思いがした。人は他者との信頼関係を持てる時に未来を語れるのだろう。本来の人間のあり方を小高の人々に見る思いがする元気をもらえる報告だった。参加者の熱量を見える形で伝えようとした編著者の努力にも敬意を表したい。












