「メレル・ヴォーリズの生涯マップ」として
〈評者〉田淵 結
今回出版された芹野与幸氏の『ヴォーリズの足跡に魅せられて』はまさに「ヴォーリズ生涯マップ」という意味でとても興味深い。率直に一読者として申し上げるならば、この一冊のサイズの割に内容が濃すぎると言うべきか、とにかく圧倒的な情報量を持っているという印象さえ与えられる。その内容のあらましさえもこの限られた紙数ではとてもご紹介できないが、氏のこれまでのお仕事・ご関心の積み重ねからこれだけの資料、情報を網羅されたのであろう。「生涯マップ」とは、ぜひこの書物を手にされるときに、近江兄弟社月刊誌『湖畔の声』連載の「からし種のゆくえ」を中心にまとめられた本書各章の記事、そこに登場する人物ひとりずつについてメレル・ヴォーリズとのつながりや関係を大きな一枚の用紙にプロット(図示)していかれると、自然に「ヴォーリズ生涯マップ」が描き出されるのではと思わされるからだ。それによってまさにメレルという存在が生きた社会、むしろ「世界」というべき広がりが一望されることだろう。
筆者が事務局をお預かりしているヴォーリズ建築文化全国ネットワークは、日本国内のヴォーリズ建築作品の大半の所在地を示した「ヴォーリズ建築マップ」(山形政昭編)を五年ごとに発行しているが、二〇二五年版を本年六月に三千部を発行しすでに二千部を上回る部数が販売された。それだけヴォーリズ建築に親しみを感じられる方々の多さを感じさせられるが、本書はその方々に、このマップの「肉付け」という意味において大いに歓迎される一書となることだろう。メレルがただその建築作品を通じて知られている以上に、芹野氏が「信仰の先達者」と評されるキリスト教活動を軸として、実に多方面への活動の広がりをもつことをこの書を通じて改めて教えられるだろう。だからこそ、私たちが改めてヴォーリズの世界をご自身で図示していかれることで、芹野氏がわたしたちに提示されるヴォーリズの存在の全体をより深く、身近に理解できるものとなるだろう。
私自身は関西学院というキリスト教主義学校とのつながりをゆるされてきた一人として、ヴォーリズが一九一〇年代から晩年まで関西学院キャンパス形成に大きくかかわることになった、その端緒ともなる当時の高等学部長、後の第四代院長となるベーツとの出会いを、芹野氏は同じカナダメソジスト宣教師であったノルマンを想定しておられる。私はメレルが一九一一年以後の神戸YMCAとのつながりのなかで宮田守衛氏(第十二代関西学院院長宮田満雄氏ご父君)との出会いも大きかったのではと考えている。ただし本書全体の記述のなかでそれは一般の読者の方にとっては細かにすぎる事柄にすぎないだろうが、そのような細部まで氏の関心が及んでいるところもまさに、氏の今日までの入念な研究と思索の成果が示されていることを示すものだろう。













