聖書通読の効用を心から訴えたい
〈評者〉佐藤司郎
チャレンジ! 聖書通読
鎌野善三著
新書判・160頁・定価1100円・ヨベル
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『チャレンジ! 聖書通読』、とても面白く読ませていただいた。ともかく著者の鎌野善三先生に脱帽である。小学校一年生のとき、お母さまからプレゼントされた、出来たばかりの口語訳聖書で「聖書通読」を始め、七十年近く、といってよいのでしょうか、通読に取り組み、この恵みを多くの人に伝え、分かち合ってこられたこと、それだけでも驚き、どういうことか興味はつきない。
だれもが一度は、いな、一度以上は、聖書通読を決意し荒波にこぎ出した経験をお持ちのことと思う。私も何度か成功し、それ以上に何度も挫折して、いまでは、朝食のとき、妻が読む聖書にただ聞いているだけになってしまった(妻は十年かけて三回目のヨブ記に入っています)。またやってみようか、エンジンをかけようか、ちょっと無理か、迷っているところである。そんな自分にとっても、大いなるヒントと力を与えてくれる一書であった。
著者の長いご経験から生まれた本書は、五つの章にまとめられている。
第一章「聖書通読の益」では、聖書通読を軸に、著者の信仰の歩みが語られている。とくに面白かったのは、大学受験のときのこと。試験当日、朝の日課で読んだのはローマ書四章一八節「彼は望み得ないのに、なおも望みつつ信じた」。「なおも望みつつ信じた」は、試験問題を解いていた最中にも、何度も響いてきたという。そして見事合格。「神様は確かに生きておられる。求めるなら答えてくださる。神のことばである聖書を通して」(二四頁)。
第二章「聖書通読の秘訣」は、著者の証しと共に、四つの秘訣が開示されている。1「時間と場所を確保する」。2「聖書の甘味を経験する」。3「励ましあう友人をもつ」。4「得た恵みを書き留める」。この章の、「通読が続かない人にお勧めしたいのは、教会の友人と、あるいは教会全体で始めることです」(五〇頁)というくだりは、その通りだと思った。じつは、私どもの教会でも、四十年前に、子育てで忙しい女性たちが集まって「素読」をはじめた会が、いまも続いていて、五回目の詩編を読んでいる。他の教会やグループも、そういうところがいくつもあるのではないだろうか。
第三章は、著者の『3分間のグッドニュース』(全五巻。改訂版、二〇一九年)の使い方の手引きである。
第四章「通読でない読み方」。ある書全体を一気に読むなど、別の角度で聖書の世界にアプローチする方法がいくつか伝授されている。
第五章「聖書通読の証し」は、聖書通読に取り組んでおられる十二人の方の証しである。この中に読者は、どなたかの経験と一致するところを、必ず見つけることができるであろう。
さて、たかが聖書通読、しかし、されど聖書通読である。鎌野先生と一緒に、私も聖書通読の効用を心から訴えたい一人である。しかしこれも自分に合った仕方、方法でないとうまくいかない。本書を参考に、私どもも、思いを新たにして聖書通読に取り組むことができれば、幸いである。
佐藤司郎
さとう・しろう=日本基督教団仙台北三番丁教会牧師