『本のひろば』は、毎月、キリスト教新刊書の批評と紹介を掲載しております。
本購入の参考としてください。
2014年11月号
出会い・本・人
ブルヴァード・S・チャイルズ(鎌野直人)
本・批評と紹介
- 『旧約聖書の水脈』並木浩一著、日本キリスト教団出版局―(左近豊)
- 『マタイ福音書を読もう2』松本敏之著、日本キリスト教団出版局―(木村利人)
- 『「おめでとう」で始まり「ありがとう」で終わる人生』市川一宏著、教文館―(大宮溥)
- 『人間への途上にある福音』フロマートカ著、新教出版社―(野本真也)
- 『旧約聖書の学び』越川弘英著、キリスト新聞社―(小栗献)
- 『大学のあり方』ハワーワス著、ヨベル―(朴憲郁)
- 『キリストは私たちのただ中に』中村吉基著、ヨベル―(関田寛雄)
- 『近代哲学の根本問題』リーゼンフーバー著、知泉書館―(茂牧人)
- 『烈しく攻める者がこれを奪う』住谷眞著、一麦出版社―(藤掛順一)
- 『近代日本精神史の位相』村松晋著、聖学院大学出版会―(釘宮明美)
- 『神とはいったい何ものか』ジョン・ヒック著、新教出版社―(稲田実)
- 『なぜ神は悔いるのか』イェレミアス著、日本キリスト教団出版局―(柊曉生)
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編集室から
日本キリスト教団出版局から発行されている月刊誌『信徒の友』が、創刊50周年を迎えた。12月6日には、東京の富士見町教会を会場にして、感謝礼拝と記念講演会が開催される。業界用語を使用して恐縮であるが、キリスト教出版界では『信徒の友』を略して「信友(しんとも)」と呼ぶ。偶然とはいえ「信友」とは、意味ありげな言葉である。
仏教では同信の人を「法友」とか「同行」と呼ぶらしい。キリスト教ではどうであろうか。一般的には信徒同士を「兄弟姉妹」と呼んでいる。ただし「兄弟姉妹」という呼び方には、「法友」のような不特定多数の同信者という意味合いは希薄で、むしろ一教会内における人間関係の具体性を表すことの方が多い。そこでいつも思い出すのが、「信友」である。一教会内という枠を超え、同じ信仰で結ばれた不特定多数のキリスト者。そう言えば私にも「信友」がいた。
二十年ほど前、仕事で一ヶ月ほど大阪に滞在したことがある。その間だけ礼拝を守る教会を探していたところ、ある方からI東教会を勧められた。私の所属教会は、I東教会とは相容れないグループに属していたので、I東教会が受け入れてくれないのではないかと心配する人もいた。しかし、I東教会の牧師も信徒も暖かく私を迎え入れてくださった。暖かいどころか真夏の礼拝にもかかわらず、説教になると窓を閉め、扇風機を全部止めてしまうのには度肝を抜かれた。
最後の礼拝の日、皆様が歓送してくださった。その中のお一人。さる官庁を定年退職されたという女性が、教会の門まで私を見送ってくださった。それどころか炎天下、私の姿が見えなくなるまでずっと立っておられた。ばつが悪いことに教会から駅までまっすぐな道である。どこかで脇道に入ろうかとも考えたがそれも大人気ない。困ったなあと思いつつ、最後の交差点で振り返ると、その方が深々と頭を下げられた。そのお姿は、まさに「信友」であった。 (寺田)