『本のひろば』は、毎月、キリスト教新刊書の批評と紹介を掲載しております。
本購入の参考としてください。
2016年1月号
出会い・本・人
神学とは何か、信仰とは何か(窪寺俊之)
本・批評と紹介
- 『メディアにむしばまれる子どもたち』
田澤雄作著、教文館―(中村柾子) - 『「きよしこの夜」ものがたり』
大塚野百合著、教文館―(小友聡) - 『古代キリスト教と哲学』
C・スティッド著、教文館―(土井健司) - 『詩編を祈る』
W・ブルッゲマン著、日本キリスト教団出版局―(郷家一二三) - 『戦時下のキリスト教』
キリスト教史学会編、教文館―(石浜みかる) - 『若者と生きる教会』
大嶋重德著、教文館―(森島豊) - 『戦争・平和・いのちを考える』
木村利人著、キリスト新聞社―(深田未来生) - 『スピリチュアルペインとそのケア』
石居基夫編、キリスト新聞社―(井上創) - 『宇宙論と進化論とキリスト教』
ジョン・ホート著、聖公会出版―(池内了) - 『英国人宣教師ライオネル・チャモレー師の日記①』
聖公会出版―(諌山禎一郎) - 『塀の中のキリスト』
吉岡利夫著、ヨベル―(川上直哉) - 『牧師の読み解く般若心経』
大和昌平著、ヨベル―(村上英智)
- 本屋さんが選んだお勧めの本
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編集室から
二年続けて『アート聖書カレンダー』(日本聖書協会)を使用した。たとえ僅かな時間であっても、一年間ほとんど毎日見るカレンダーは、それなりに気をつかって選ぶ。
2015年5〜6月は『箱舟に乗る動物たち』カスパー・メンベルジャー・兄/画(アートバイブルⅡ 旧約46頁より)の絵画が、二カ月分の日付とともに紹介されていた。最初の一カ月目は何事もなくスルー。六月になって若干の違和感を覚えつつも二週間が過ぎる。次頁の七月になるまでに見定めなければいけないと思ってさらに一週間が経ち、問題の場所をじっくり鑑賞したのは、最終週に突入してからだった。
ノアの箱舟の絵。まもなく訪れる大洪水に備えて、急ぎ箱舟の乗り込もうとするノア一家と動物たちのようすを描いている。しかし、画面左上のいる馬のような動物は絶対に怪しい。頭に角が生えているように見える。ユニコーン? なぜここに? 気がつくと調べてみたくなり、インターネットや図書館で探したが、画家の情報を見つけることはできなかった。
そのかわりスラヴ民話では、ユニコーンが大洪水以前に存在した動物として、語り継がれていることを知ることができた。コミュニケーションを大切にしないユニコーンは、日頃から他の動物たちと良い関係でなかったそうだ。ノアから箱舟に乗るよう促されても、「泳ぐ」と強情を張って断ったため溺れ死んで伝説となった。話の趣旨がすり替わっているような気もするが、人付き合いが下手な私にとっては身につまされる教訓。
あらためて絵を観ると、箱舟に急ぎ乗り込もうと大わらわのノア一家と動物たちと、その光景を少し離れたところから静かに眺める異形の生き物がいる。心の中で、おかしな感情移入が芽生え始めているのを感じる。画家はスラヴ民話を絵に取り入れたのだろうか。注意深く観ると角の生え際は、手前の動物と重なり描かれていない。これも計算の上なのか。ともあれ、与えられる新しい年に感謝して希望を託そうと思った。 (吉崎)